検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:33,043 hit

現実 ページ10





失ってからはじめて気づく大切なもの




「……はぁ」




俺は今日何度目か分からないため息をはいた。


あの日以来、幽は一度も現れない。




あれは夢だったんじゃないか、と考えてみても

俺のジャージのポケットに入ったロッカーの鍵の重みが、

俺に夢じゃないことを告げている。





ロッカーは開けていない。



それが幽との約束だから。






放課後、委員会で遅くなった俺は遅れて部室に向かった。






「っ!それは本当か!?」




「その日は俺が補習で、柳先輩と一緒にお見舞いに行けなかった日じゃないスかー!!」





少し開いていた扉から、話が丸聞こえだった。一体なんの話をしているのか、見当がつかない。





「……精市には、伝えないつもりだ。」





……なんで俺の名前が出てくるんだろう。

俺の嫌いな悪口を言われているみたいだ。





「俺が、何?」




「幸村!」




「……ちゃんと説明して」





再び静まり返る。

何を話していたのか、モヤモヤする。





「……全国大会が終わるまで、待ってくれないか。それが終わったら全部話す」




「え……いいんスか、柳先輩。そんなことしたら幸村部長が……」





ふと思い出したのは幽の言葉。


『じゃあさ、全国大会で優勝してよ。幸村くん』

『まだ開けちゃダメだよ。全国大会で優勝したら、開けてみて。……いや、別に開けなくていいや。開ける時は覚悟をしておいてね』





「なんで、なんで全国大会が終わってからなんだ…!皆も、幽も……。」




「今、全てを話すと全国大会どころではなくなるだろう。すまない、精市。」







やりきれない気持ちを抑えて部活を始めた。


調子が悪かった






***






部活終了後、幽はいなかった。


いつもみたいにお疲れ様、と笑って言ってくれない。




苦しい



辛い



泣きたい



会いたい






俺はポケットの中の鍵を握りしめる。




このロッカーを開けたら世界が変わるのだろうか。




幽がイタズラな笑みを浮かべながら、飛び出してきてくれやしないか。





そんなバカなことを考えつつ、俺はロッカーの鍵穴に鍵を差し込んだ。


現実→←狭間



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (54 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
61人がお気に入り
設定タグ:テニスの王子様 , テニプリ , 幸村精市   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アマリス(プロフ) - はあー・・・。良かった!プロポーズか・・・。別れなくて良かった。疑ってごめんなさい、幸村君!夢主とお幸せに! (2019年10月31日 15時) (レス) id: 9443474794 (このIDを非表示/違反報告)
アマリス(プロフ) - シリアス過ぎる・・・。幸村と夢主が別れるなんて嫌!!ダメ、別れないで!! (2019年10月30日 9時) (レス) id: 9443474794 (このIDを非表示/違反報告)
Le-ca(プロフ) - スッゴく面白いです!ゆっきーと立海推しだから楽しい!それに、文章力とタイトル、語彙力に話の進め方が最高。シリアスありつつ、硬くなったり飽きないから大好きです!これからも頑張って下さい! (2019年9月29日 20時) (レス) id: 0ae78945e9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そらの | 作成日時:2019年9月23日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。