現実* ページ14
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『初めまして、雪村Aです!氷帝学園から転校してきました。よろしくお願いします!』
偶然にも、彼女は俺のクラスに転校してきた。
そして俺の隣の席。
『ゆきむら同士で並んだね!』
「ふふ、そうだね。」
『幸村くんって、自分の苗字呼んでるみたいだから……精市くんって呼んでもいい?』
「いいよ。じゃあ俺はAさんって呼ぼうかな」
明るく屈託のない彼女に、俺が惹かれるのは早かった。だから俺は彼女を懸命にテニス部のマネージャーに誘ったりもした。引き受けてくれた時は柄にもなくガッツポーズまでして。
『はい、精市!ドリンクだよ』
「ありがとう、A」
いつからかお互い、さんもくんもつけなくなって。
俺達はとても仲が良かった。
「お熱いのぉー、お二人さん。苗字も"ゆきむら"って夫婦じゃな。」
『ちょっ、仁王くん!からかわないでよー!!』
Aがポカポカと仁王を叩いている。
よくからかわれることは多いけど、俺は嫌じゃないし……むしろ、
「ねぇ、A。好きだよ。……俺と付き合ってくれないかな」
『……えっ!?』
顔を真っ赤にして仁王を叩く手を止めるA。
しゃがんで唸っている様子は面白かった。
『私も、精市のこと好き。だから、よろしくね!』
ニコリと笑ったA。本当に可愛い彼女だ。
仁王が居た堪れない空気になっているが、俺は無視して彼女を抱きしめた。
***
『どう、精市。似合ってる?』
マネージャーになった彼女に発注した立海ジャージが届き、俺の真似をして肩にジャージをかけている。
「似合ってるよ。あとさ、あんまり可愛いことしないでほしいな。」
顔を赤くするA。こういう言葉には未だに慣れないらしい。
彼女は俺の背中に回り、俺のジャージを床に落とした。
『精市のジャージを落とした私の勝ち!』
「なんの勝負してるの。このジャージは王者の誇りを背負ってるから、もう落とさないでね。」
『そうだったの!?ごめん!!』
彼女は慌ててジャージを拾い、俺の肩にかけて抱き着いてくる。
『じゃあ私もこのジャージ、絶対大切にする。私と立海の皆にとっての宝物だね。』
彼女はジャージを大切に、大切にしていたのだ。
俺はもっと早く気づくべきだったんだって。
____取り返しがつかなくなる前に
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アマリス(プロフ) - はあー・・・。良かった!プロポーズか・・・。別れなくて良かった。疑ってごめんなさい、幸村君!夢主とお幸せに! (2019年10月31日 15時) (レス) id: 9443474794 (このIDを非表示/違反報告)
アマリス(プロフ) - シリアス過ぎる・・・。幸村と夢主が別れるなんて嫌!!ダメ、別れないで!! (2019年10月30日 9時) (レス) id: 9443474794 (このIDを非表示/違反報告)
Le-ca(プロフ) - スッゴく面白いです!ゆっきーと立海推しだから楽しい!それに、文章力とタイトル、語彙力に話の進め方が最高。シリアスありつつ、硬くなったり飽きないから大好きです!これからも頑張って下さい! (2019年9月29日 20時) (レス) id: 0ae78945e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そらの | 作成日時:2019年9月23日 16時