Episode.07 ページ7
.
松本はこれから行く会社のスポーツ飲料を飲んでいる。
俺は松本が買ってくれた飲み物を開ける。
「っ、うわ！！」
缶を開けた瞬間、プシュッと炭酸が溢れ出す。
とっさに体を離したからスーツにはつかなかったけど、溢れ出た炭酸が少しだけネクタイについた。
それを見てケタケタと笑っているこの男。
「おい！！」
「ははは、翔くん昔からよく引っかかるよね」
「ふざけんなよ...今から話し合いだっていうのに...」
「だからちゃんとスーツが濡れない程度にコントロールしてるでしょ」
顔を崩して笑う松本を見ていると怒りなんて忘れてつられて笑ってしまう。
そうだ、思い出した。昔もよくやられていた。
こいつは懲りずに何度も繰り返しやってきて、俺はその度に何度も引っかかっていたんだ。
「あーあ、ひどいよお前」
「絶対引っかかると思ったんだもん。手もびっしょり濡れてる」
「誰のせいだよ」
「かして」
松本がポケットからハンカチを取り出して俺の手を取った。
そのまま丁寧に、炭酸で濡れた手を拭く。
急激に心臓がばくばくした。
松本はこういうことを平気でするやつなんだ。
優しくて、自然体で、やんちゃで、そんな松本が俺は。
「はい、綺麗になった」
パッと手が離れると同時に我に返る。
なにちょっと淡い気持ちを思い出してんだ俺は。
俺が松本を好きだったのは昔のこと、今はちがう。
昔好きだった人が突然現れて、気まずくて、少しドキッとしているだけ。
松本を見ると、こっちを見て笑っていた。
「...遅刻するから、行くぞ」
「うん、行こ」
缶の炭酸飲料を飲み干して、ゴミ箱に捨てる。
炭酸のシュワシュワした刺激が胸の奥にずっと残っていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽっぷ(プロフ) - 作者さん» ありがとうございます(՞ ܸ.ˬ.ܸ՞)” スローペースになりますが、どうぞよろしくお願いします。 (12月30日 23時) (
レス) id: f3544ac854 (このIDを非表示/違反報告)
作者(プロフ) - またぽっぷ様の作品を拝見できること、大変嬉しく感じます。最近はまた他の作品を一から読み直していて、とても素敵な時間になっています。体調にお気をつけて、更新楽しみにしております。 (12月28日 11時) (レス) id: 0d9c2c70ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2023年12月22日 13時
