episode56 ページ9
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｢相葉くん、チラシこんな感じでいいの？｣
｢わあ、すごくいいじゃん！｣
智くんが描いたチラシを見て、相葉くんがわあっと声を上げる。
そういえば智くん絵とか好きなんだっけ。
高校のときも色々と絵を描いては、先生たちにコンクールに出すようお願いされてたりしてたな。
コピーしてくるね、と誰かが受け取る。
テストも無事におわり、オープンキャンパスが近づくにつれて、お手伝いの人がどんどん増えてきた。
半分くらいは知らない人で、半分くらいは顔見知り。
中には女子もいるし。
買い出し行ったり、味見をしたり。
まるで文化祭そのものだ。
相葉くんを中心に物事が進んでって、ニノは女の子たちと看板の色塗り。
智くんはひとり黙々と作業をしてる。
俺はといえば…。
｢翔くん、俺することないんだけど｣
｢…やることは自分で探すもんなの｣
｢えー…でもー…｣
俺はずっと松本といる。
なぜかって、人見知りの松本はヘルプで来た人と打ち解けられず殻に閉じこもっているからだ。
自分から話しかけられずにひとりぽつんとしている松本に声をかけたら、子犬みたいに懐いてきて。
俺のそばから離れなくなってしまった。
こいつこんなに人見知りだったのか。
周りも松本には声をかけにくいのか、どことなく距離感があるし。
まあ松本のクールな見た目だと声をかけるのには勇気がいるかもしれないけど。
｢櫻井、おまえも手伝えよー！｣
｢はいはい、今行くから｣
遠くの方からのヘルプ要請。
俺が行こうとすれば、松本が不安そうな顔をする。
なんだその顔は。
置いてくなって、捨てられた子犬のような…。
ごつい体しといてそんな表情似合わねえぞ。
まあそんなこと松本を見ていたら言えなくて。
｢ほらおまえも行くぞ｣
｢うん…！｣
ひひって嬉しそうに笑う松本。
周りが、笑った松本を見て安心したような顔をした。
やっぱ見た目が少し怖いだけなんだって。
ほんの少し笑うだけで柔らかくなるんだから。
作業を始めると松本も周りの人と打ち解けてくる。
真面目なやつだからたまに空気をピリッとさせるけど、松本が笑うだけで空気が和らぐ。
先輩たちからもすっかり可愛がられて、作業は円滑に進んだ。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2019年3月1日 20時
