episode86 ページ39
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子どもみたいに遊園地ではしゃぐ松本。
俺はひたすら振り回されて、苦手なジェットコースターにバイキングにお化け屋敷に…。
色んなとこ連れ回された。
もうヘトヘトな俺とちがって、松本はどんどんテンションが高くなっている。
そんな松本を見ていると、なんだか子どもを遊園地に連れてくるお父さんの気分というか。
微笑ましい気持ちになる。
「見て翔くん、風船もらっちゃった」
「はは、よかったな」
風船を嬉しそうにもつ松本はとても幼い。
夏休みってこともあって周りは子どもばかりだけど、ちらほらカップルや大学生もいる。
だけどどこにも男ふたり組はいなかった。
思えば松本と2人で出かけることなんて初めてだ。
直人さんの店とか飲み会以外で外で会うこともなかったし。
(松本ってこんな無邪気な顔するんだ……)
ずっとこの表情を守りたい。
ときどき見せる寂しそうな顔は、もう見たくない。
「翔くん、観覧車乗ろう」
「まじか…俺高いのは……」
「また手繋いでてあげるから」
また手を引かれて、ずんずん歩く松本に早歩きでついていく。
観覧車はとても怖いけど、松本と一緒なら。
そんな馬鹿な思いが湧き上がってくる。
なんだろう、これ。
しばらく味わってこなかったこの感じ。
男には抱いたことのない感情がぽこぽこと浮かんでくる。
(────俺、松本のこと……)
「あ」
松本が持っていた風船が、松本の手から離れて飛んでった。
立ち止まった松本が、ぼーっとそれを眺める。
風船は遠くに飛んでって、あっという間に見えなくなった。
「……飛んでっちゃった」
ショックだったのか、松本はぽつんと呟いた。
「まつも……」
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「────あれ、松本じゃん」
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2019年3月1日 20時
