episode74 ページ27
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「どうした？潤と何かあった？」
黙り込んだ俺を見て、直人さんが優しく問いかけてくる。
心がきゅーんっとなって、心の中のぐずぐずした部分をさらけ出してしまいそうになる。
ちょっと謝りたくて、とだけ言えばそれ以上は詮索してこない。
実際、とてもしょうもない話だし。
ただ、この先気まずくはなりたくないから。
「…松本が帰ってくるまで待っててもいいですか？」
「いいけどー…帰ってくるかわかんないよ？」
「はい、閉店時間には帰ります」
直人さんは承諾してくれる代わりに、絶対に俺の視界に入るところにいてね、という条件を化した。
たぶん、俺が初めて来たときにおじさんに襲われかけたことを覚えているのだろう。
松本といい、直人さんといい、2人とも心配症だ。
「櫻井くん、お酒は？」
「じゃあ…一杯だけ何かお願いします」
一杯だけ飲んで、少しだけ緊張している心を和らごう。
帰ってきて俺がいるのを見たら松本はどう思うだろうか。
ひとりで何してんだって怒るだろうか。
また襲われるだろって。
怒られないように、酒は少しにしなきゃ…。
それより松本はちゃんと今日は帰ってくるのだろうか。
話があるなら本人に直接連絡しろって言うのは当たり前なんだけど。
せっかくの夏休みの予定を邪魔するわけにもいかず、こうして待ち伏せなんてしてる。
閉店までまだまだ時間はある。
直人さんが作ってくれたお酒をちびちび飲みながら、松本の帰りをずっと待った。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2019年3月1日 20時
