episode206 ページ6
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昨日の夜は松本に電話をした。
よく考えたら俺から電話をかけるのは初めてだったかもしれない。
松本はもしもし？っていつものトーンより少し明るかった。
櫻井からの電話嬉しいって。
松本はいつも素直にそう言ってくれる。
だから俺も素直に伝えたいことを言える。
ふーととのことをちゃんと話した。
襲われかけたことは省いて。
ちょっと助けてもらったんだって。
それだけの関係だよって。
松本は穏やかな声でそっか、と言った。
話してくれて嬉しいよ。
そう言って松本の笑う声が聞こえた。
(...好きだな)
安堵した笑みなのか、よく分からないけど。
いつも優しく俺を受け止めてくれる松本が好きだと思った。
｢櫻井、ニヤけてる｣
｢へ、あ......｣
頭で思い浮かべていた松本に指摘されて顔引き締める。
目の前にいるのに昨日のことを思い出していた。
松本のことを思ってニヤけていたとは言えない。
松本は俺の頬をぷにっとつまんでふはっと笑った。
今日はご機嫌みたいだ。
｢松本...今日もバイト？｣
｢うん。しばらくはずっとかな｣
｢そっ...か...｣
｢寂しい？｣
｢ん...｣
忙しいみたいで、松本は今日もバイト。
寂しいよそりゃ。
いつも一緒に帰ってたんだもん。
しばらくは我慢しないといけない。
松本は愛おしそうに俺のことをぎゅっと抱きしめた。
...なんか久しぶり...。
｢俺も寂しい｣
｢ぅ、あ...｣
耳元で松本の声がするとゾワゾワする。
わざとなのか分からないけど、息をかかって...。
だめ、くすぐったい...。
松本は抱きしめる腕を緩めてはくれず。
嬉しいけど...恥ずかしい...。
｢バイト終わったら電話するね｣
｢うん...待ってる...｣
おでこにキス。
母親が息子にするような、優しいキスだった。
うぅ...胸がきゅって...。
好きってなった。
松本を独り占めできる時間が愛おしい。
これからは減っちゃうけど、この時間を大切にしなきゃ。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年6月4日 20時
