episode224 ページ24
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｢...松本だけが好きなんだ、ずっと｣
｢俺もだよ。俺もずっと翔くんだけが好き｣
そうだ。
俺が松本を見つめているだけだったように、風斗も俺のことが好きなんだ。
気持ちは分かるはずなのに、好かれる立場になると上手く頭が回らない。
｢...気持ちはすごくわかるんだ。ずっと好きで...見つめるだけの想いを抱えて過ごす日々の気持ちは...｣
｢うん｣
｢...でも俺が好きなのは松本。ひとりだけだよ｣
立ち止まって、風斗を見上げた。
背が高いから、風斗が下を向かないと目が合わない。
でもちゃんと目を見てほしくて、下からのぞき込む。
そしたら風斗は目を合わせてくれた。
大事なことはちゃんと話さないと。
俺は言葉で伝えるのは苦手だから、せめて態度で。
｢...風斗とはお付き合いできません｣
今まではっきりと言えなかった言葉を伝えた。
大事なことだから、いつまでもだらだらと引き伸ばしては行けないと思った。
告白を断るのときの気持ちが初めてわかる。
相手のことを好きじゃないとしても、こんなにも心が痛むのか。
こんな自分を好きでいてくれて嬉しい気持ちと、申し訳ない気持ち。
複雑で、変な感じ。
｢...わかったよ。ありがとう、返事くれて｣
最後に、と手を握られた。
風斗の手は大きい。
いつか怪我をしたからと渡した絆創膏は当たり前だけどもうなくて。
傷もすっかりなくなっていた。
風斗はちょっと悲しい顔をしたあと、いつもみたいににっこり笑う。
街灯に照らされて、夜でも爽やかだ。
作り笑いだとしても、笑っている風斗を見て安心した。
｢っわ.....｣
突然ぐいっと握っていた手を引かれて。
すっぽりと風斗の腕の中。
逃れられないよう、力強く抱きしめられた。
(...痛い...)
風斗の想いが痛かった。
｢...じゃあ翔くん、また会ったらおしゃべりしよう｣
｢..うん、じゃあまた｣
強く押し返すことだってできた。
しなかったのは俺。
ひたむきに想いを伝えてくれる風斗を突っぱねるなんて、そんなことできなかった。
初めて告白をしてくれた風斗は、きっと忘れられない人になる。
じゃあ...と風斗から離れるとき。
声が聞こえた。
｢────櫻井...？｣
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年6月4日 20時
