episode188 ページ28
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｢...翼のこととか、色々あって渡せなかったんだ｣
｢そっか...買っててくれたんだね｣
｢...あのときは...恋人でもなかったし...俺の片思いなのにこんなの買って...渡せなかった...｣
櫻井がきゅーんと切ない顔をした。
そうだよね、櫻井はずっと俺のこと好きでいてくれたんだ。
恋なんてそんなものだけど、櫻井のつらい片思いをさせていたかと思うと...。
もっと早く踏み切って、櫻井との時間を増やしたかったと本気で思ったりする。
｢ありがとう櫻井｣
俺は語彙力ないからさ。
心を込めて櫻井にキスを送った。
唇から思いが全て伝わるといい。
照れ屋な櫻井に。
｢んぅ...っ...｣
ちょっと長すぎたかな。
櫻井が苦しそうに胸を叩く。
残り惜しいけど唇を離した。
｢路チューしちゃったね｣
｢そっ......そうだけど..｣
｢ふふ、誰かに見られたかも｣
顔を赤くした櫻井は無言で俺の腕を叩いた。
かわいい。
櫻井を腕に収めて、5秒だけ強く抱きしめた。
これで明日も大丈夫。寂しくない。
櫻井からもらったキーケースを握りしめて、反対側に歩き出した。
ほんとはまた櫻井を家まで送りたかったけど、さすがに近くだし。
振り返れば、櫻井も同じタイミングでこっちを見た。
────どくん
嬉しくなって手を振れば、櫻井も小さく振り返してくれた。
｢ふふん〜♪｣
'もしも許されるなら眠りについた君をポケットに忍ばせてそのまま連れ去りたい'
父親が好きな歌の歌詞を思い出した。
これは確か失恋ソングだから、今の俺には合わないけどね。
このキーケースに櫻井も付けたいなんて。
そんなことを思う自分にぞっとして、ちょっと笑えた。
自分がこんなにも独占欲の塊だとは。
櫻井を好きになって、知らない自分を知るばかり。
櫻井もそうだったらいいな。
俺と出会って、何かが変わってくれていたら。
家に着くまでその歌を歌いながら、ずっと櫻井のことを考えていた。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年5月5日 19時
