episode187 ページ27
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｢────まつもと...！｣
背後から足音と、息を切らす声。
聞いたことないような声を聞いて秒で振り向いた。
櫻井だ。
さっきキスしてお別れしたはずの櫻井がいる。
息切らせて、額に汗にじませて。
｢櫻井...！どうした？｣
俺の前まで来ると、はあはあしながら膝に手をついて息を整えてる。
ハンカチでも渡そうかと思ったら、逆に櫻井に何かを渡された。
渡されたっていうか、胸に押し付ける感じで。
(────え...なに？)
未だうつむいたままの櫻井から受け取った小さな黒い紙袋。
とめられたシールには何やら'present'らしき文字。
ん...？プレゼント...？
何も言わない櫻井に断りを入れて紙袋を開けた。
｢わ...これキーケース？｣
｢うん...｣
真っ黒なキーケースを取り出す。
夜道だけど街灯に照らされた俺の手元にあるキーケースはよく見えた。
｢...それ誕生日プレゼントで買ってたやつだから...もう新品にはならない...かな｣
ごめんね、ってお門違いな謝罪。
なにがごめんねなんだよ。
こんなに嬉しいのに。
いつの間に買っていてくれたのだろう。
櫻井が俺のことを思って選んでくれただけで飛び跳ねて喜びたいほど。
｢すごく嬉しい...｣
さっそく家の鍵を取り付けた。
今まで財布に入れたりしてるだけでキーケースを持ったことなんてなかったから。
少し大人になった気分だ。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年5月5日 19時
