episode95 ページ15
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ーーーガタッ
櫻井のいる寝室から物音がした。
慌ててそこへ行ってみれば、ペットボトルを取ろうと手を伸ばす櫻井。
ドアを開けた俺をぎょっと見つめていた。
(...本当に、櫻井じゃないみたいだ)
目を見開く、という表現が櫻井にピッタリと当てはまる。
前髪が長くてちゃんとは見えないけれど。
メガネもなにもしていない、そのままの櫻井の顔。
｢はい、どーぞ｣
固まってしまっている櫻井にペットボトルを渡しても、依然としてそのままだ。
櫻井は戸惑って、どうしていいか分からないみたいだけど。
それは俺も。
初めて見る綺麗な素顔に、戸惑っている。
思わず、本当に思わず。
瞳が見たくて櫻井の前髪を左側に寄せた。
｢わ...ーーーーーー｣
(綺麗な瞳...)
今までメガネと前髪で隠していたもの。
吸い込まれそうなほど、綺麗な瞳だ。
熱のせいか、どことなく潤んでいて。
ドキッとした。
｢.........ん...？｣
左目のまぶたに、小さな傷......
｢っ......｣
パシッと乾いた音が響く。
前髪を寄せた俺の手を、櫻井が振り払った。
｢あ...ごめ...｣
櫻井の方が気まずそうに謝る。
なんとなくは分かっていた。
櫻井は目が悪いわけじゃないって。
｢...櫻井おかゆ食べる？｣
俺の問いかけに小さく頷いた。
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作者名：ぽっぷ
| 作成日時：2017年2月17日 18時
