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*9.先生と生徒 ページ9

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『あ..ちょっとやばいかも、いや頑張ろう
もうちょっとだしね』

















放課後、静まり返った教室を残して

先程私のクラスで行った授業の

テスト前に集めたノートを

抱き抱えながら一階の職員室まで進む














けれど

2つ目の下りの階段に差し掛かった時

安心感からなのか

油断してしまったようで。















私の不安な思いをよそに

見事に勢いよく階段へ

一斉に落ちていくノート達













ちょうど人がいなかったから

怪我人は出なかったものの

人がいたら危なかったと冷や汗が募った。












ため息をつきながら

階段や階段下の廊下付近に

散乱したノートを必死に集めていると

突然近くに出来た影と落ちついた低めの声

にふとどきりとした。














__うわ..先生これは派手にやりましたね













顔を上げれば、予想通りの人物が。

立っていた長い足を曲げては

私と同じふうにしゃがみ込むと











散乱したノートを何枚か手に拾いながら

私の顔を見て少しクスッと笑う

黒田くんがいた。

















校外学習の日の彼が発したあの言葉が

忘れられなくて











それ以来

教師である私は、いや1人の人間として。

彼とどう向き合うべきなのか














そんな事を悩み考えていれば

接し方を見失いかけていた。

いつの間にか前よりも彼と接する機会が

少なくなってしまっていた気がする。














彼を見ていると

個人の領域に

他人が土足で踏み込んではいけない

そう強く感じる事があったけれど。















久しぶりにちゃんと授業以外で

取ったコミュニケーションに

やっぱり私はその常識を覆したくて。












私が彼へ役に立てる手助けになる

チャンスが彼と少しでも長く接する

機会はないかとそう感じれば












まるで、私の心を読み取ったかのように

彼の国語ノートが目の前に落ちていた。

















同時に私よりも先に

目の前のそれを拾った彼が

何故か自分のノートをパラパラと見始めれば

無言にノートを見つめていて。













テスト2週間前












__先生..今回の範囲よく分かんなくて..

__もう一度国語教えてくれませんか?






 

そのチャンスは彼自ら訪れてくれた。










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作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時

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