*6.先生と生徒 ページ6
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『あの..ちょっとだけお手洗いに、、』
時刻は20時半、学校の授業が終わり、
新しい先生方を含めての親睦会から
1時間がやっと経過した。
中々タイミングが掴めずにいたけれど
ついにその場の騒がしい空気感に耐えられず、
頭に回ったアルコールが気持ち悪くて
やっと出た言い訳の言葉。
いや、一番は隣にいる彼の存在の
時々感じる視線に耐えられなかった事が
大きかったかもしれない。
少し、ふわふわしながら
お手洗いではなく、居酒屋の扉を開けると
一気に熱い体が冷たい空気で
冷やされた気がした。
『はぁ、、』
さっきの空間とは違って静かな路地裏。
一呼吸置いていると
突然出来た私よりも遥かに高い影と
特徴的な声に
__..大丈夫?
一瞬心臓が飛び出そうになった。
2人の間に流れる気まずい沈黙。
だけれど反射的に彼の方を見てしまったから
しっかり交わった目線は
何故か彼から逸らせなくて
ずっと今も目が離す事が出来なかった。
私の席の隣にいた彼とは
紹介された時も今も一言も話してない。
目だって合わせられなかった。
いや合わせられる訳がない。
向こうも合わせにくいに決まってる。
けれど、いつの間にか
さっきよりも近くに出来た距離に
目があったまま思わず少し後ずさると
__お酒弱いもんな、あんま無理すんなよ
私の肩に二回ほど
ほんの少しだけ触れた彼の手に
速くなる鼓動は止めれなくて。
あれだけ酷い振られ方をしたのに
前みたいにそんな優しい瞳と声色をされると
心が全て一瞬にして
彼に引きずりこまれそうになった。
初めて見たスーツ姿は
正直あまりにも似合いすぎていて
あの時の事、大学時代の事を
いまさらきつく当たる事なんて
この時はまるっきり出来なかった。
そうすると彼は
私達の過去のことなんて一ミリも触れずに
すぐにその場を去っていってしまった。
きっと彼も私との再会に驚きを隠せていないと思う。
だって、紹介された時
信じられないとでもいうように
目を見開いては私を見て呆然としていたから。
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作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時