*4.先生と生徒 ページ4
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『ちょっと気分転換にね、、というかダンス凄い上手だね!』
「なるほど。ここの空気美味しいですもんね。いや、そんな別に..全然ですけどありがとうございます。」
彼からここへ来た理由を突然聞かれたものだから
彼を心配して来たなんて直接本人に言える訳もなく
適当に口から出た嘘をついてごまかす。
ダンスの事を褒めればほんの一瞬だけ。
見たことのないような少し照れたように
はに噛んだ彼
だけれど、こちらに会釈を軽くすると
またいつもの大人っぽい彼に
すぐに戻ってしまった。
『ご飯ってもう食べたのかな??』
「あ..まだです。途中でした。さっきまで食べてたんですけど」
『誰かと..食べなくていいの?ほら教室とかでさ』
「もしかして、先生僕が1人でいる事とか心配してくれてます?まぁ、僕基本1人の方が楽っていうか、慣れてるんで大丈夫です。気にしないでもらえると助かります。」
何気なく友達の話題に話を触れては
彼からの返事を恐る恐る待っていると
彼の返答に動揺を隠せなくて。
私の話を聞きながらベンチに腰を下ろした彼は
ベンチに置かれた食べかけのお弁当箱を
片手に取りはっきりと私の目を見てそう呟いた。
私が考えていた事なんて
彼にはまるっきりお見通しだったみたい。
けれど、逆に私も彼を見て気がかりな事、
彼の心が少しだけ見えたような気がして。
__僕基本1人の方が楽っていうか
__慣れてるんで大丈夫です
そう発した彼の明らかにさっきより
低くなった声のトーンと
強い言葉とは裏腹に彼の綺麗な瞳は
どこかとても切なげで、苦しそうで。
一瞬だけ見えた少し微笑んだ笑みが
何か私が触れてはいけないような
そんなものを抱えている。
そう感じたのは決して
気のせいではないと思った。
けれどまだこの時は、
見ず知らずの私があまり知らない彼の世界に
土足で入り込むなんて事は出来なくて
だからこれ以上その事について
問いかける事なんて事はそう簡単に
出来なかったんだ。
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作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時