*19.先生と生徒 ページ19
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『え、ちょっと!黒田くん、傘!こんなとこで何やって』
「あ、、先生」
『とりあえず雨強いからあっちいくよ、、って黒田くん??』
もうすぐ夏が近く頃の仕事からの帰り道
残業が続いてくたくたの身体を必死に持ち堪える。
残業日に雨が降るなんて最悪だと憂鬱な気持ちの中
少ない街灯の中、暗闇のアスファルトを歩いていると
こんな土砂降りの雨の中、傘もささず立っている人に
思わず足を止めてしまった。
目を凝らしながらよく見てみると
背丈の高さとスタイルから
公園の中に一人ぽつりと立っているのは
やっぱり黒田くんで
小走りで彼の方へ近寄れば
服も頭も全身びしょ濡れの身体
彼の頭に傘を被せると
私をじっと見つめる彼の綺麗な瞳と目があう。
悲しみを帯びた苦しそうな顔は
前にも見た事があった
意識が朦朧としているような彼の言葉は
いつもより口数が少ない。
ただ、先生と呼ぶ声が耳を掠めたと同時に
傾いていく身体をとっさに支えると
どうやら私の腕の中で収まった彼は
眠っているだけのようで一安心する。
__教師が一人の子を特別扱いしてはいけない
そんな言葉が一瞬頭をよぎったけれど
今は彼をこの場に置き去りにするなんて
私には出来なくて。
普通の教師なら
保護者や彼の家に帰すのが正解だと思う
けれど
こんな夜遅くにこの場にいた事
制服のままの彼にどこか違和感を覚えて
地面に転がったリュックの中から
少し見えたのは彼のスマホ画面
__えらく違うな兄さんとは
__お前にいったい何が出来るって言うんだ?
__だからお前の周りに味方は誰もいない。お前一人だ
ケンの尖った言葉達に胸が締め付けられる
普通の居場所に彼を帰す事
それは今の彼には
どこか違うような気がして
自分でも無意識だったと思う
彼を自分のマンションに連れてきていたのは
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作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時