*12.先生と生徒 ページ12
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誰もいない職員室に沈黙が続く
こんな背後にすぐ近くに彼がいるのは
あんな優しい声で話しかけてくれるのは
あまりにも久しぶりだった。
たかがあんな振られ方をしたせいで。
彼への恩を忘れてしまっていたと
自分が情けなくなると
いつの間にか目に熱い何かが溜まるのが分かって
しっかり交わっている綺麗な瞳から
また視線を逸らそうとする。
だけどびっくりしたように目を見開く彼と
目が交わった時
彼から違う方向へ身体を背けるより
落ちてきた彼の優しい指が
私の瞳から溢れそうなものを拭うと
降りてきたのは
__ごめん。俺Aの事あんな傷つけたのに..
__触れられるの嫌、だったよな。
__というかこの間の居酒屋の時も触れた気がする..
__無神経な事して、ごめん
__というか、今も触れてるな..ほんとごめん
予想だにしない苦しそうな申し訳なさそうな
そんな反省の言葉で。
少し焦ると目をパチクリさせながら早口になる癖は
昔から変わっていなかった。
瞼に触れた優しい感触が素早く遠のくと
私と彼の距離がさっきよりも少しだけ開く。
別に不思議と彼から触れられるのは
嫌じゃなかった。
ただ、彼に恩返ししないといけない事が
いっぱいあったのに
あれ以来、彼から振られたあの日以来
そして現在も私は何一つ返せていなくて
そんな自分が情けなくなったからなのに
私が目から溢れそうになるものを
彼は全て自分のせいだと勘違いしていて
少し申し訳なくなった。
確かにあの時酷い振られ方をして
凄く苦しかった。
だけど、それはあの時抱えていたあの問題とは
何も関係ない事で。
今、本当に溢れそうなものの真の原因は
それじゃなかったんだ。
__私こそほんとごめん..
ちゃんと向き合わないといけないのは
彼ではなく私の方だった。
だから、気づけば勢いよく
そんな自分を責める彼に頭を下げていた。
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作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時