検索窓
今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:10,859 hit

*12.先生と生徒 ページ12

.

.

.

.



















誰もいない職員室に沈黙が続く

こんな背後にすぐ近くに彼がいるのは

あんな優しい声で話しかけてくれるのは

あまりにも久しぶりだった。
















たかがあんな振られ方をしたせいで。

彼への恩を忘れてしまっていたと

自分が情けなくなると














いつの間にか目に熱い何かが溜まるのが分かって

しっかり交わっている綺麗な瞳から

また視線を逸らそうとする。













だけどびっくりしたように目を見開く彼と

目が交わった時














彼から違う方向へ身体を背けるより

落ちてきた彼の優しい指が

私の瞳から溢れそうなものを拭うと

降りてきたのは



















__ごめん。俺Aの事あんな傷つけたのに..

__触れられるの嫌、だったよな。

__というかこの間の居酒屋の時も触れた気がする..

__無神経な事して、ごめん


__というか、今も触れてるな..ほんとごめん











予想だにしない苦しそうな申し訳なさそうな

そんな反省の言葉で。

少し焦ると目をパチクリさせながら早口になる癖は

昔から変わっていなかった。









瞼に触れた優しい感触が素早く遠のくと

私と彼の距離がさっきよりも少しだけ開く。















別に不思議と彼から触れられるのは

嫌じゃなかった。














ただ、彼に恩返ししないといけない事が

いっぱいあったのに

あれ以来、彼から振られたあの日以来








そして現在も私は何一つ返せていなくて

そんな自分が情けなくなったからなのに














私が目から溢れそうになるものを

彼は全て自分のせいだと勘違いしていて

少し申し訳なくなった。















確かにあの時酷い振られ方をして

凄く苦しかった。

だけど、それはあの時抱えていたあの問題とは

何も関係ない事で。










今、本当に溢れそうなものの真の原因は

それじゃなかったんだ。











 

__私こそほんとごめん..





 





ちゃんと向き合わないといけないのは

彼ではなく私の方だった。








だから、気づけば勢いよく

そんな自分を責める彼に頭を下げていた。















.

*13.先生と生徒(過去)→←*11.先生と生徒



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
86人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。