*11.先生と生徒 ページ11
.
.
.
.
『はぁ..まぁ一回目で何か手がかりになる事なんて引き出せないか』
放課後、テキストを持って教室内から
職員室に帰ってくると
私以外誰もいない静まり返った室内
先程の黒田くんとの会話を思い出しては
1人肩を落とすと力が抜けたように
椅子に座る。
いよいよ今日から放課後の少しの時間だけでも
彼が苦手な国語を教える事が始まったのだけれど
私が彼に役に立ちそうな事は
勉強以外全くなくて。
あの切ない瞳の原因を突き止めて
彼がもっと周りと向き合うように
なるにはどうすればいいのかとか
そんな手がかりはまだ一向に見つからなかった。
__あれっ..まだいたんだ
そんな時誰もいないはずの職員室内から
突然背後から聞こえてきた声
見なくても誰かなんて一瞬に分かる
あれだけ一緒にいたんだから。
いや、彼が私と一緒にいてくれた
と言い換えた方が妥当かもしれない。
何故か少しずつこちらへ近く気配に
なんとか平然を装うと思わず目の前にあった
テキストに目を移した。
__あんま1人で抱えこむなよ
__こんな俺が言う権利も立場もないけどさ
少しくらい頼ってよ
__A
目の前に出来た気配と同時に
すぐに上から頭に降りてきた
ホッとするような感触に
何故か振り払う事なんて出来なくて。
その優しい温かい声が
あの時のように私を下の名前で呼ぶ暖かい声が
昔の記憶と重なった時
無意識にテキストから背後の彼へ
自ら視線を移していた。
ああ。私は一体何をしているのだと。
彼には沢山迷惑をかけたし沢山救われたのに。
あの時、どん底の暗闇から救い出してくれたのは
いつも彼だけだった。
.
86人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もなか | 作成日時:2021年12月11日 15時