鏡花水月の段 ページ38
*
目が覚めるといつもの天井だった。
そっか私…
伊作先輩の背中で眠っちゃったんだ。
首と足に丁寧に巻かれた包帯を手で触ってみる
あの恐怖も痛みも、全部本当にあったことなんだ。
『もし5年生が来てくれなかったら…』
私は今頃どうなっていたのだろう。
怖くなって自分の体をギュッと抱きしめる。
それから再び寝ようと目を瞑ってみるが、なかなか寝付けなかった。
『目が覚めちゃったし日記でも書くか』
何となく障子をあけてみると、外は真っ暗で
静寂に包まれていた。
蝋燭に火を灯し机のすみにおく
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
○月×日
囮につかわれるとは思ってなかった。
これで人攫いが無くなるなら良かったと思う。
だけどもう痛いのも怖いのもゴメンだね。
5年生、伊作先輩、助けてくれてありがとう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ノートを閉じて引き出しにしまい、ふぅと火を消した。
なんとなく夜風にあたりたくなった私は庭へ出てみた。
冷たい風が心地よい。
池を覗くと綺麗な満月が
顔を上げ本物の月を見る…
今日も元の世界に帰る手がかりは見つかんなかった。
私このままずっとこの世界なのかな…
それは嫌…なのか自分でもわからない。
お母さんには会いたいけど
元の世界に帰ってもわたしはただのヒキニート。
だけどこの世界でなら誰かの役に立てた。
落とし穴から小松田さんを助けて
皿洗いをかわって
人攫いの囮になって
痛いし怖い思いもしたけど元の世界より充実してた。
『私は…』
ほんとに元の世界に帰りたいの?
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ようちゃん(プロフ) - 面白いです!続きまってます! (3月1日 14時) (レス) id: e74ec347f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かるた | 作成日時:2024年2月25日 16時