勿忘草

慧side ページ45

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薮「退院おめでとう」


光「学校で友達作れよ！」


高「ほんと寂しくなるな…」






慧「…お世話になりました、ありがとうございました！」








今日、俺は退院する




10年もここにいたから、外の世界なんて分からないことだらけ






それでも、今こうして笑顔で退院出来るのは、やまちゃんの大ちゃんのおかげだろう





ずっと居た病室を出る





ドンッ


侑「…っｸﾞｽｯ……けいちゃんっ…いっちゃ、やだっ…」



病室を出て、飛びついてきたのは侑李だった


10年間、狭い病院の中で、唯一俺に癒しをくれたのは紛れもなく侑李だった

夕食に呼んでくれたり、一緒に絵本を読んだり、ベッドの上でお話したり





慧「しばらくはリハビリのために毎日病院に通うよ、絶対侑李に会いに来るから」



まだ小さな侑李を抱きしめる


侑李はとっても甘えん坊だけど、賢くて優しい子





侑「慧ちゃんが、退院できたらから僕も頑張るっ」


慧「…ありがとう、侑李」





今、生きてることに初めて実感が湧いた



もし、俺が死んでしまっていたら、侑李は病気イコール死、と捉えてしまったかもしれない


俺が生きられたことで、侑李が頑張れる


初めて誰かの役に立てたのかな、と思った




.





そして




最後に中庭へ向かう








しばらく手紙はやまちゃんに取りに行ってもらってた為、中庭に来るのは久しぶりだった









慧「……あ、あった…」







いつのもの、その場所にあったのは



手紙と、それから…






慧「……お花…」




手紙の上に、青くて綺麗なお花が一緒にあった




山「……勿忘草…」


声のする方を向けば、笑顔でやまちゃんが立っていた



…初めて会った時と同じ光景だ




山「そういえば、こうして慧と出会ったんだね」


慧「わすれなぐさ…」





やまちゃんがお花置いてくれたの？

と聞けば、「俺じゃないよ」と返される



手紙の1番上には「退院おめでとう」という字が書かれている

…大ちゃんだ





山「慧は勿忘草の花言葉、知ってる？」




知らない、と首を横に振れば

やまちゃんはその綺麗な声で教えてくれた




山「…真実の友情」


慧「…っ！」


山「それから、“忘れないでね”っていう意味もあるんだ。…大ちゃんは慧のこと、本当のお友達だと思ってくれてるんだね」




真実の友情…忘れないで…



大ちゃん…俺、大ちゃんに会いたいっ





慧「やまちゃんっ…俺、大ちゃんに会いたいよっ」

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