勿忘草

慧side ページ2

ｶﾞﾗﾗﾗ




高「慧君おはよう、朝のチェックしに来たよ」





扉が開いたと思えば、看護師である高木雄也が、俺の朝食を持って入ってくる





彼はこの小児病棟唯一の男性看護師で、見た目はチャラついたヤンキーみたいで看護師には見えないけど、その人柄はとても人気らしく、入院患者からは“ゆうやん”なんて愛称で呼ばれている



特に親しくしようとも思わない俺は、彼が来てからそんな風に呼んだことはない

呼ぶとしたら名字で呼ぶくらい






手際よく熱を測って、点滴のチェックして何かを記入している



その光景をボーッと見ていれば頭をポンポンと撫でてから






高「今日は安定してるね、良かった」




なんてニッコリと俺に笑いかける


こんな無愛想な俺にまでその笑顔を見せるのだから、患者に好かれるのはそういった理由からだろう






高「朝ごはん食べたら、新しい先生くるから紹介するね」





何も答えない俺にそう伝えて病室を出る






新しい先生…？



そういえば昨日、担当医だったおじいちゃん先生が退職すると言っていたっけ



ちゃんと挨拶もしないまま退職してしまったのか



きっと俺なんてただの患者としか思っておらず仕事の一環で接していただけで挨拶なんて求めていないだろうから、わざわざしなくてもいいのだけれど







医者なんてそんなものだ



人助けをしたい




そんな思いで医者になったとしても、どうせお金が目的であって、患者が死のうと生きようとただの業務である



患者が、例えば政府のお偉いさんやプロのアスリートでもない限り、貰える給料は変わらないのだから、寧ろ死んだ方が仕事が減って楽になる



そう考える医者が多数だろう






つまり、


親にも見捨てられて誰にも必要とされない、20歳まで生きられるか分からない俺なんて、別に助けようが助けまいがどうでもいい事なのだ




きっと、この後くる新しい担当医とやらも、別に俺をどうこうするわけでもなく、延命のために“仕事”をするだけだ




だから別にわざわざ紹介してもらわなくて結構だし、
「これから一緒に治していきましょう」なんて決まった挨拶もしなくていい。









こんなことを考えてしまう中学生の俺なんて傍からみたら異常なのだろうか

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