笑わない華 ＊ 6 ページ8
＊
｢あれって、王帝月ノ宮の野坂くんじゃない！？｣
｢本当だっ！西蔭くんに……誰、あの子。｣
｢あ、もしかして、王帝月ノ宮のマネージャーの……｣
｢え、姫宮ちゃんっ！？｣
プレイヤーズゲートから中に入った私達は、少し歩いただけの筈なのにそんな歓声に囲まれていた。
野坂くんも西蔭くんも、それを予想していたのか軽く受け答えをしながら前に進んでいく。
私が慌てて後を追おうとすると、西蔭くんが私の腕を引っ張ってくれた。
そのまま引っ張られる様に歩いていくと、ふと見覚えのある少年と視線があった。
あれは……新生雷門中？
彼等も試合を見に来たのだろうか。
目が合ったからには、スルーはできない……そう思ってペコリと頭を下げると、そのうちの一人が笑いかける。
何故笑ったのか……なんて、今の私にはよく分からない。
｢何してるの、ユズキ。
試合が始まるよ。｣
｢……｣
｢ユズキ？｣
｢野坂さん、ユズキは俺が連れていきます。｣
｢ああ、頼んだよ、西蔭。｣
ーーー
明日人side
つくしさんと神門さんが野坂についての話をしているのを横目に、俺は別の子をじっと見つめていた。
綺麗な紫がかった黒髪をふたつに縛った、無表情の女の子。
ふと、その子が視線をこっちに向ける。
綺麗な菫色の、光が宿っていない瞳で俺を見ている彼女。
ペコリ、と頭を下げた彼女を見て、俺は思わず微笑みを返していた。
｢あれ、明日人くんもしかして姫宮さんに興味あったりします？｣
｢！？｣
｢確かに、男性プレイヤーの中では姫宮さんはかなり人気のマネージャーですからね〜……｣
｢大谷さん……姫宮さんとは？｣
｢あれ、杏奈ちゃんも知らないの？
えっとね〜……これこれ！｣
そう言ってつくしさんが取り出したカード。
“冷淡な情報屋”姫宮ユズキ……。
つくしさんが姫宮ユズキという少女について語っている間、俺はずっとカードの中でも無表情な彼女を見つめ続けていた……
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