終わりの合図 ＊ 6 ページ43
＊
｢……吉良ヒロト！｣
｢……え？｣
西蔭くんの目線の先……観客席の向こう側には、あの吉良くんが隠れるようにして立っていた。
試合、見に来たのかな……。
さっきの態度からだと、それは考えにくい気もするけど。
―
基山タツヤは、ベンチに下がった。
交代は無し、雷門が少し有利な形。
雷門はあっという間にボールを前線に運び、明日人くんが剛陣鉄之助へパス、そのままゴールへと運んだ。
｢わあっ！ごーじんさんすごい！｣
｢必殺技じゃない！｣
｢剛陣……さんって、必殺技持ってなかった気がするんだけど……｣
それでも点を入れられてるのは、ここまで勝ち上がってきた雷門の実力……と言ったところなのか。
ふと、気になって永世ベンチの方を見てみると、足の治療をする基山タツヤ、監督として何をするのが正解なのかを考えているであろう吉良瞳子さん、そして……
永世の得点王、吉良ヒロトが居た。
南雲晴矢と吉良くんが入れ替わり、交代そうそう一点をもぎ取った。
その猛威に雷門イレブンは震え上がってしまったらしい。
流石得点王と呼ばれるだけあって、あっという間に同点まで追い返してしまった。
先程足を痛めたらしい八神玲名と瀬方隆一郎が入れ替わる。
吉良くんは、その入れ替わりを気にすることなくプレイを続けていた。
｢ユズキさん、ユズキさん｣
｢……どうしたの、神童くん｣
｢……あそこ｣
神童くんが指さす方向を見ると、遠目に灰色の長髪が見える。
……灰崎くん、かな。
｢すげー！あれ、星章学園のエースストライカーだ！｣
｢あれ、じゃなくて灰崎くんね｣
灰崎くんのことをあれ呼ばわりする霧野くんを宥める。
それにしても……灰崎くんが試合を見に来るなんて、珍しい。
……灰崎くんの目的は、雷門？それとも、永世？
灰崎くんに気を取られているうちに、基山タツヤがフィールドに戻ってきていたらしくて。
｢やっと俺と日本一を目指す気になったか｣
｢興味ねえよ｣
前半の残り時間は5分……
この5分間で、この2人はどこまで追い上げるんだろう。
そう思いながら、そよ風で乱れた髪を軽くすいて直した。
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