壊れた記憶 ＊ 1 ページ22
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“ユズキ……次の僕達の試合、見においで”
野坂くんは、私にそう言ってくれた。
勿論、私は頷いた。
野坂くんが……戦術の皇帝と呼ばれる程頭のキレる彼が何を企んでいるのかは分からない。
けど、きっと私は野坂くんのことについて、1歩進めるんだと思う。
……って、最近、私野坂くんのことばっかり考えてない？
なんでこんなに気にしてるんだろう……同じ部活の選手とマネージャーっていう関係なだけなのに。
そんなことに思考を巡らせていると、私の居た部屋のドアの向こうから大きな音と声が聞こえた。
｢おい、聞いたか！竹見が……！｣
ーーーーー
竹見くんが脱走しようとした。
私はその会話を聞いて、疑問符を浮かべる。
脱走……何から、なのかな。
毎日厳しい練習をするこの王帝月ノ宮から……？
それとも……あのアレスの天秤、から？
私が到着すると、サッカー部の皆が竹見くんを囲んでいた。
野坂くんは椅子の背もたれに顔を預けて竹見くんに何かを話していた。
｢君は自分がやったことの重大さが分かっていないようだ｣
｢ただ自由になりたかっただけだ……何が悪い！｣
｢アレスの天秤は人の育成を完全に管理するシステムなんだよ。
君がやるべきことを決めるのは、君じゃない｣
野坂くんを見上げながら吠えるように叫ぶ竹見くんに、それを淡々と受け止めながら尋問する野坂くん。
……アレスの天秤は、人の育成を完全に管理するシステム……。
それが、王帝月ノ宮サッカー部が強かった理由ってこと？
皆が機械的なサッカーをする理由……それは、そういう事なのかな。
灰崎くんから聞いて私が想像していたより、このシステムは人間をしばるってこと？
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