笑わない華 ＊ 18 ページ20
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試合を見終わった私は、自分の思考に集中した野坂くんを見てから、西蔭くんに先に帰るとだけ伝えた。
先に帰る……のは、事実。
雷門と星章の試合を見ていて、少し気になることがあったから……それも調べる予定。
そして、私には今王帝月ノ宮という監視は何処にもない。
今日こそ、アレスの天秤についての情報を──────
｢お、落としたよ！｣
｢……？｣
｢……姫宮さん、だよね！
はい、プレカは大事にした方がいいよ！
俺もこの前さ〜｣
そう言いながら私にプレカを差し出し、笑顔で自分の失敗について語りだす彼。
先程までフィールドで激しい戦いをしていた稲森明日人だった。
数分間、黙って話を聞き続けていると、突然自己紹介を始めた。
｢あ、自己紹介してなかったよね！
俺は稲森明日人、雷門中サッカー部の……｣
｢分かるよ……試合、見てたから｣
｢だよね〜！へへ、俺も有名になってきたのかなぁ……
それに姫宮さんって、冷淡な情報屋って呼ばれてるみたいだし！｣
｢まあ……調べ物は、得意。
えっと……プレカはありがとう、私、用事があるから行ってもいい？｣
｢え、あ、そっか、呼び止めてごめん！｣
稲森明日人は私の言葉を聞いて慌てて謝る。
何だか、騒がしい人。
｢あ、それとさ……ユズキって呼んでもいいかな？
俺のことも明日人でいいから！｣
｢え、あ……｣
｢おーい、明日人！そろそろ帰るぞ〜！｣
｢あ、ごめん氷浦！
何かあったら相談くらいはのるよ！じゃあ！｣
氷浦貴利名に呼ばれて、稲森……明日人くんは、去っていった。
最後まで騒がしい……けど、なんか一緒にいて楽しいかも、なんて。
相談……かあ。
明日人くんは、私がアレスの天秤について聞いたら、答えてくれるのかな。
……嗚呼、まずまず詳しくなかったりして。
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