笑わない華 ＊ 9 ページ11
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アレスの天秤プログラム……それは、私達の学校にスポンサーとしてついている“月光エレクトロニクス”が考えた、完璧を作るプログラム。
そして……そのプログラムを使って作られたサッカーチームが……月ノ宮中サッカー部だということ。
｢……んで、茜はそれにぶっ壊された。
だから、俺はアイツらに復讐してみせるって決めてんだ。｣
｢……てない……｣
｢あぁ？｣
灰崎くんは不服そうに眉を顰める。
｢聞いてない……｣
｢何を聞いてねえんだよ……あ、名前か？
そういや聞いてねえな……お前、なんて名前なんだ？｣
｢聞いてないよ、野坂くん……｣
｢！？
野坂って、お前……！
おい、待てよ！｣
脇目も振らずに走り出した私にそう怒鳴る灰崎くん。
知ってる……灰崎くんが、野坂くんに怒りを抱いていること。
ううん……今、知った。
色々と、繋がった気がする。
何で野坂くんが、私をあそこまで気遣ってくれるのか。
何で灰崎くんが、野坂くん……王帝月ノ宮のサッカー部にあそこまでの怒りを抱いていたのか。
何で本来それなりに会話もする筈の月光エレクトロニクスの御堂院さんが、私を避けているのか。
私は、何も知らなかったんだ。
何も……知らなかった。
｢なんで……なんで、誰も、教えてくれなかったの……？｣
走りながらやっと絞り出したその言葉は、誰の耳に届くこともなかった。
ー
No side
｢おい、待てよ！
……ったく……｣
一方、姫宮ユズキが走っていってしまったのを見送った灰崎は、悶々とした気持ちでベンチに座り直した。
彼女は、最後にあの野坂の名前を呼んだ。
つまり、彼女も自分が大好きな茜が壊れてしまったプログラムに、関わっているのかもしれない。
それでも……灰崎は彼女を信じていた。
何故かは分からない……それでも茜に似ていて、それとは別に見覚えのあるあの少女を疑うことが出来なかった。
彼女は……純粋な茜の友達で、何も知らないまま野坂に操られているのではないか……
だが、本人が居なくなってしまったら、聞く術もない。
｢そういや、学校も聞いてなかったな……
まあ、どうせフットボールフロンティアで勝ち進めば会えんだろ。｣
短く息を吐いた灰崎の顔は、自信に満ち溢れていた。
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