1本の糸*2 ページ23
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話を聞けば、絵名さんも瑞希を探しているそう。
絵名「瑞希ってば、普段は明るく振舞ってるくせにこの前の電車の帰りに愚痴零してたの!
ありえない!」
A「絵名さん、その話何回も聞いた……」
絵名「そうだ、Aが瑞希に聞けば、何か聞き出せるかも……」
A「え、えぇ……今度やるんで、とりあえず瑞希はあっち行きましたよ。
私、用事があるので。」
このやり取りを数回行っている私からすると、つまらないものでしかないのだ。
特に用事なんてないけど、面倒になって絵名さんを肩を押す。
瑞希ねぇ……私も、詳しくないからなぁ。
でも、絵名さんが気にしてるなら私も少し探ってみよう。
もしかしたら、朝比奈さんと宵崎さんも同じことを考えているのかもしれない。
そんなことを考えていると、曲がり角で誰かにぶつかる。
A「ご、ごめんなさ……って、類さん。」
類「おや、Aくん。
すまないね。」
類さんはよろけた私を片手で支えた。
もう片方の手にはスマホが握られている。
A「私は全然大丈夫です。
……あ、そういえば、類さんは瑞希と昔なじみなんですよね?」
類「?あぁ、そうだよ。」
A「その……瑞希、なんていうか……
何か、裏とか……あったりします?」
私が遠慮がちに聞くと、類さんは一瞬だけ顔を曇らせた。
本人はすぐ元のふんわりした顔に戻ったので、私にはバレていないとでも思っているのか。
知らないと答えた。
あぁ、類さんは何かを知っているんだな。
A「そうですか。
ありがとうございます。
ところで、類さんは何を?」
類「あぁ、東雲くんのお姉さんを見なかったかい?」
A「絵名さん……なら、さっきまで喋ってましたね。
あっちに行きました。」
類「そうかい。ありがとう、Aくん。」
類さんはそのまま去ろうとした。
あ、瑞希が探してたこと伝えてない。
私はふと思い出して、類さんにその事を伝えるために腕を引く。
類さんはバランスを崩すことなく振り返る。
体幹……いいんだな……。
A「類さん、さっき、瑞希が探してましたよ。」
類「おや、そうだったのか。ありがとう、Aくん。」
類さんは笑顔でお礼を述べて、私が指さした方向に歩いていった。
ああいう人が、モテるんだなあ。
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作者名:桃園天利 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/1eec8acd853/
作成日時:2021年5月25日 23時