【ハイキュー!!】恋に恋する乙女【稲荷崎】

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『あぁああ手ぇ繋いだあぁああ』

「静かにせんとバレるで」





呆れた顔で私の口を塞ぐ治くん。

私たちは、侑くんたちの30m後ろくらいをずっと歩いていた。

駅から少し離れたくらいで、侑くんの方から手を繋いだのだ。興奮せずにはいられない。





『きっと「はぐれるから」って言って繋いだんだよ！少女漫画あるあるやもん!!!』

「繋ぎたいからじゃあかんの？」

『照れ隠しや治くん!!ここ重要！』

「ほーん」





興味なさげに目を細める。治くんに少女漫画のいろはを語りながら歩いていると、あっという間に目的地についた。

今日のデート場所、最近できたばかりのショッピングモール。





『さてさて、二人(ターゲット)はまずどこへ行く……？』





遠くにいる二人に目を凝らす。ショッピングモール内へ入った二人は、映画館の中へと吸い込まれていった。





『ｴｲｶﾞｶﾝ!!!』

「落ち着きぃ、カタコトになっとるで」

『初めてのデートでは最適の場所！緊張していても映画中は話さなくてもいいし、何時間も時間を共有できる！そして映画が終われば共通の話題について感想を言い合える！』





ぐっと拳を握りながら私は目を輝かせた。

傍から見れば、新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだろう。

私は緩みがちな頬をペチペチと叩きながら、治くんに向きなおった。




『さて、治くん。私たちもどこか行こうか』

「え？尾行はもうええの？」

『映画やし、多分２時間は出てこんからな。せっかく治くんもオフやし、楽しもうや』




私がニコッと笑うと、治くんは少し私を見つめてからそっぽ向いてしまった。

『どうかした？』と聞くと、「どうもせんわアホ」とデコピンを喰らった。理不尽。





(あかん、不覚にも笑顔にトキメいてもうた)




治くんが照れている事なんて露知らず、私はショッピングモールのマップを広げて舐め回すように見つめる。

服屋もあるし、食事できる所もある。屋上にはちょっとした遊園地っぽいものもあるそうだ。




『どこか行きたい所ある？私たちも映画見に行ってもいいけど』

「あーいや、俺ここ行きたい」




そう言って治くんがマップを指さす。そこは東京にしかないパンケーキ屋さんだった。こちらにも出店して来たのだろう。




『じゃあここ行こか』




私たちは、肩を並べて歩き出した。





(A、俺らもデートっぽくなっとる状況に気がついとらんな)

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