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2021年6月 ページ1

6月。
心地の良い春はつい1ヶ月前に過ぎ去り、今は初夏に差し掛かった頃だろうか。
夏が始まって間もないというのに、容赦なく照りつけてくる太陽。思わず手で光を遮りながら空を仰いだ。
…暑い。もう日差しは十分だから陰を作ってくれ陰を。僕を殺す気か。
心の中で太陽に悪態をつきながら、フラフラと砂利道を進んでいく。

5分ほど歩いて、ようやく目的地に着いた。
ここに来るまでに通ったのは、少しの砂利道と数えられるほどしかない階段。
にも関わらず、ハァハァと膝に手を付き息を整えている自分に、ただただ苦笑するしかない。
日頃の運動不足と引きこもりが祟ったか。

いつまでもこうしている訳にもいかないと、顔を上げ数メートル先にある“ソレ”まで再び歩を進める。
大量の葉をつけた、今はもう葉桜となってしまった木に覆われている場所にあの子の(ソレ)はある。
さっき程の日差しはどこにもなく、むしろ涼しいとすら感じられてしまうその場所は、心做しかあの子を思い出させた。

「ねぇ、また来たよ。」
そう話しかけて水をかけてやれば『また来たの?』と困ったように笑う君の姿が簡単に想像できた。
「ごめんね。僕だってなるべく来たくないんだけど」
____でも未だに、君が死んだなんて信じられなくて。

そう思った瞬間、鼻の奥がツンと痛くなって、心臓がドクドクドクドク早鐘を打ち出す。
あぁもう…だから6月は嫌いなのに。

3年前の記憶が走馬灯のように頭に流れ込んでくる。
『どうしよう…私人殺しになっちゃった…』
「じゃあ僕も連れてってよ。」
「君は何も悪くない。」
『死ぬのは私一人だけでいいよ。』
「待って…!!A…!!!」

親友と呼ぶには近すぎて、恋人と呼ぶには遠すぎた
そんな僕たちの関係。
それでも一緒に居れたのは、
“お互い愛されたことがなかったから。”
そうか。今思えばあれは、世界から外れた者同士のちょっとした逃避行だったのかも
なんてね。



ほら、また今年もあの日のことを思い出す。

2018年6月12日→



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もな(プロフ) - 柊柊さん» わ!返事返してくれてありがとうございます!学校から帰ってきてびっくりしました…、それとホントに初めてなのってくらい素敵な小説だったので、もっと自信をもってください‼︎‼︎では、次の作品も楽しみにしていますね。 (2021年10月12日 18時) (レス) id: e231a59855 (このIDを非表示/違反報告)
柊柊(プロフ) - もなさん» はじめまして!作品を読んでくださりありがとうございます!初めて書いたのでもうぐっちゃぐちゃだったと思うのですが…w楽しんでいただけたならすごく嬉しいです。次の作品も精一杯書かせていただきますね!よろしかったらまた覗いてやってください! (2021年10月12日 16時) (レス) id: 06641ec593 (このIDを非表示/違反報告)
もな(プロフ) - 初めまして、あの夏が飽和する。見させていただきました。とても、面白かったです。私自身、あの夏が飽和する。が好きで、小説も買いました。だから、この小説を見つけて、すぐ読みました。また、次の小説も楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (2021年10月11日 19時) (レス) @page18 id: e231a59855 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊柊 | 作成日時:2021年10月10日 21時

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