趣味やってたらトリップした件について誰か教えてほしい。【文豪ストレイドッグス】 (ページ38)

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秋「時に残酷でもある。」ページ38

芽吹side

無我夢中で走る。
たった一人、本物の愛をくれた人の許へ。
たった一人の家族となった兄さんの許へ。

苦しい、辛い、何時もだったら走ることを止めてしまうだろう。
だがそれ以上に強い感情が傷だらけの躯を止めるどころか加速させるのだ。
その感情が何なのかは知らない。
だけどそんなの知らなくてもいい。

芽「どうかッ……！」

どうか兄さんを殺さないでくれ神様！！
彼奴は私のッ………！
私の大切な兄なんだ！

桜庭吹雪という奴の所為で何度自己嫌悪になったか、惨めになったか判らない。
其れでも私を支えてくれたたった一人の兄なんだ。

まだ………まだ兄さんに“ありがとう„を………お返しを出来てない！
其れなのに死なれたら私は妹失格だ！
たった一人の兄にありがとうすら云えないなんて………！

芽「此処だ！」

階段を駆け上がる。
あと三階………。

あと二階………！

あと一階………！！

あともう少し！

扉を乱暴に開ける。
部屋は電気が点いていない。
だが靴があるということは兄さんは居るのだろう。
確か書斎があったはず………！

芽「兄さんッ！！」

其処には血を流している兄さんの姿があった。
明らかに刃物で刺された傷だ、このままじゃ出血多量に心肺停止となる。
疾く救急車を呼ばないと……！

芽「大丈夫、大丈夫だ、今救急車呼んだから、だから安心していいよッ………。」

吹「芽吹………疾く逃げろ……。」

芽「出来る訳ないだろ！犯人がまだ居るなら私も一緒に死ぬ！」

吹「芽吹！………芽吹、ごめんなこんな碌でなしの兄貴で………。」

芽「そんな事ないよ………兄さんは私の自慢の兄だよｯ……だから死なないで………！」

吹「ありがとな、でももう駄目だ。」

芽「まだ間に合う！だからそんな………！」

吹「お前の兄貴で居られて善かった。」

その言葉で碌に機能していなかった頭がやっと冷静になった。

芽「私も兄さんの妹で居られて善かった。」

吹「お前の誕生日にこんな死ぬことになって悪いな………。」

芽「兄さんの命日が誕生日だなんて誇らしいことこの上ないよ………。」

吹「最期に訊いてくれ………。」

芽「うん………。」

吹「どうか、倖せになってくれ………直ぐじゃなくていい、ゆっくりでも………。」

其れがお前の兄の、桜庭吹雪の倖せだ。

芽「………判った。」

　

　

　

兄さんは、もう息をしなくなった。