海と輝くその恋はTwo Season【好きな人がいること】

◇70.滲む花火 ページ30

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昔から、なにかと、一人でいることには慣れているはずだったのに、


どうして今、こんなにも寂しく、辛いのだろうか。






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一度誰かの優しさに触れた人間は、


元がどれだけ強くても、


触れた瞬間に弱くなる。









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とぼとぼと歩き始める。






あと少しで花火が始まってしまう。


一人で見るのも悲しいだけだが、このまま帰る気にもなれなかった。








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宛もなく歩いていたはずなのに、


たどり着いてしまったのは十年前と同じ、あの船着き場だった。






心のどこかで、あの日と同じことが起こるんじゃないかと、


期待していたのかもしれない。







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十年前のあの日…、





私は走り出したはいいが、行く宛なんか無くて、


なんとなく来てしまった船着き場。






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さっきまでわんさかいた人も、一人もいないし、


鼻緒が切れかかった下駄は痛いし、


夏向とは喧嘩しちゃうしで、







私は一人、船着き場に座り込んで、泣いていた。








まもなくして花火が始まって、


私はそこから一人花火を眺めていた。







りんご飴握りしめながら、海に映る花火があまりに綺麗で、


悔しくて寂しくて、涙が止まらなかった。







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“何泣いてんだよ”



そんな無愛想な声がして振り返ってみると、息を切らした様子の夏向。








私探してくれたことが、見つけてくれたことが、


嬉しくて仕方なかったけど、


さっきの喧嘩のこともあって、すぐにﾌｲｯと顔を背けた。








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