5階 S．S ページ12
随分昔の話
兄貴の友達だった先輩
俺はその先輩の彼女に恋をした……
初恋の人
中坊だった俺の初恋は誰にも気づかれることなく終わった
高校を卒業して東京に出てきた2人は
２０歳で子供が出来て結婚
それがA
俺よりも5歳年上のその人はずっと俺の憧れで
東京に出てきてからも
「一人暮らしじゃ中々野菜食べないでしょう
うちにご飯食べに来なさい」
なんて言われてよく家にも行った
その娘が20歳になったお祝いにとうちの店に予約してくれて
15年ぶりに会うAを見て驚いた
「オカンそっくりやな」
「よう言われるわ〜」
「なんでやねん杏奈の方が可愛かったわ」
「もうパパ恥ずかしいから人前でのろけないでよ」
「あんなにちっちゃかったのに
俺も年取るはずやわ〜」
俺の記憶の中のAは5歳のまんまで
それがある日突然昔のオカンにそっくりな顔で現れた
しかも、俺を好きになったなんて言い出した
そんなん無理やろ
いくら俺でも
昔好きだった人にそっくりな娘に手なんか出されへんわ
しかも15歳も年下って
犯罪やんけ
「すばるくんがいいの」
なんて言われても
無理なもんは無理
初恋の相手は特別や
でも正直Aに好きって言われんのも悪い気はせぇへん
若いって真っ直ぐで羨ましい
「Aお前が俺の事好きなんは勝手にしたらええと思てる」
「ホントに？」
「最後まで話聞け」
「は〜い」
「いつかお前のオカンを超えるくらいええ女になって誰もおらんかったら付き合ったってもええわ
だから頑張れ」
「えっ？なんでママ？」
「そろそろオトン迎えに来るぞ」
タイミング良く店のドアが開いて
先輩が来た
「おぅ す ばる
とりあえずビールやな」
「イヤイヤ娘迎えに来たんやろ
はよ連れて帰って」
「なんでやねん せっかく娘とデートやのに」
「パパよりす ばるくんがいい」
「振られたで」
「アホか照れとるだけや
ホンマはすばるより何倍もカッコええ思とるわ」
「ホンマ親子で勘弁してや」
.
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作者名：ほままる | 作成日時：2016年8月27日 4時
