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誰よりも早く冷静になった阿部ちゃんが救急車を呼んだことにより一時的にその場は収束した。
救急車には岩本くんが乗って俺らは岩本家に取り残されたまま。
このまま勉強もできないだろうと先程の部屋で何も出来ず座っていると深澤くんの携帯に電話がかかった。
「照からだ…。」
スピーカーにしてスマホを机の上に置くと机の近くに全員が寄った。
『まず、命に別状はない。手術するようなことも。』
その言葉に少しだけほっとする。
『…けど、パーキンソン病の進行に加え足に衝撃を与えてしまったことにより…もしこの病気が完全に治るようなものだとしてももう完治することは…ない、って…。』
息が詰まった。
岩本くんの泣き声だけが部屋に木霊する。
「…照、ありがとう。もういいよ。今は一人で泣いてたいでしょ。」
『う、んっ…』
その返事を聞いて深澤くんは電話を切った。
また重苦しい雰囲気が流れる。
何が、
守ってあげたい、守りたい…だ。
守れてない、それも俺のお茶を注ぎに行こうとしたから……俺の、せいじゃん。
「…目黒。あんまり考えすぎんな。お前のせいじゃない。康二にもともとパーキンソン病があるっていうのは知ってたんだから…あんまり、追い詰めんな…。」
弟想いで誰よりも早く駆けつけた岩本くん。
誰よりも冷静ですぐに救急車を呼んだ阿部ちゃん。
周りを見て気配りができる深澤くん。
さっきから俺の背中を撫で続けてくれてるラウール。
…俺、なにか出来た…？
康二くんになにかしてあげれた…？
「…めめ……。」
「…決めた。」
「…え？」
「俺、医者になって康二くんの病気治す。」
「…は？目黒が？お前、いくらなんでも今からじゃ……。」
「…めめ、それ本気？」
「本気。俺、康二くんの為に生きたい。」
「…分かった。でもその代わり、毎日きっつい勉強だから覚悟してよ。」
「もう、覚悟してる。」
阿部ちゃんが真剣な目で俺を見る。
俺も見返す。
俺が康二くんの足になる。
俺が康二くんを支える。
俺が康二くんの病気を治す。
それができるなら、なれるなら
例え一日中勉強でもなんてことないと思った。
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作者名：HIMI | 作成日時：2023年4月28日 18時
