抱きしめて守るから。 (ページ2)

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◇

ていうのが、今日の昼の話で今は部活中。

足元にあるボールを蹴るだけで周りに集まっている女子が騒ぎ立てる。

正直うるさいし、集中できない。

「パーキンソン病……サッカーも出来ないってことだよな…。」

ボソリと呟いた言葉はオレンジ色に染まってきた空に消えていった。

◇

「目黒〜この後サッカー部のみんなでカラオケ行くんだけど来る？」

「あーパス。夜からバイト入れてるし。」

「お前忙しいよなぁ、今度予定空いたら教えてくれ！」

「うん。」

部室を出て校門へと向かう。

バイトをしているのは事実。けど、今日バイトを入れてるのは嘘。

俺はああいう絡みが苦手だった。

帰り道の土手を歩いていると、

オレンジ色の夕焼けに透かされて明るく見える滑らかな茶髪に

体より少しオーバーサイズな服とズボンを身に纏う男の人が

夕陽を見ていた。

それがまるで

今にもその人が夕陽に吸い込まれてしまいそうで

思わず、肩を掴んだ。

「…え。」

「…あ、す、すみませんっ！！！」

「……蜜柑学園…。」

「え…？」

「あぁ、すんません。兄がその学校に通ってるからつい。」

関西特有の訛り。

くりっとした目。

顔に散りばめられたホクロは彼の可愛さというか魅力を引き出していた。

まだ、消えてしまいそうな雰囲気を纏う彼を

守ってあげたいと

思ってしまって。

「お、俺の学校にお兄さんいるんですか…。俺、知ってるかもしれないです！名前教えて貰えますか…？」

「…岩本、岩本照って言うんやけど…。」

「…え！？い、岩本くんの弟！？」

「なんや、ホンマに知ってたんや。」

ケラケラと笑う彼に目を奪われる。

彼の背景に移るオレンジ色の空はこんなに綺麗なのだと初めて知った。

「俺、目黒蓮って言います。」

「俺は向井康二やで。」

自己紹介をして彼の名前を知る。

守りたい、守ってあげたい。

病気からも、何からも。

緊張で強ばる顔に笑いだした康二くんと失礼じゃないですか、と怒る俺を照らす夕陽が

なんだか特別に思えた。