君に狂わされた恋車４Ren Sho

154.不気味な明るさ 紫耀side ページ6

紫耀side


これはあいつの計画のうち？
それとも勝手に俺が黒く染まっただけ？
どこまでが想定されていて
どこからがあいつの計画の範囲外なのか。
それすらも俺には分からない。

まだ、計画は続いているのか、それとも、終わっているのか。もう完全にひとみを手に入れたときその計画は終わりを告げるんやろうか。




『紫耀ー？』

ドアの向こうから時間差で聞こえる声が
俺に平常心を取り戻させる。


昨日みたいに取り乱した怒りの声なんかじゃない。
一昨日みたいに絶望と諦めが混ざった声なんかじゃない。




なぜかその声のトーンは明るくて楽しそうにも聞こえた。


あぁ、異変に気付いてしまった。






取り戻したと思った平常心は一瞬で消え
それとともに心拍数が上がった。




日々変わっていくひとみ。



永瀬が黒幕だと知ったのになぜそんなに気持ちでいられる？上手い嘘でかわされた？


扉の向こうから聞こえたたった１つの単語が
俺を焦せらせる。

今日の声は今までで1番気持ち悪い。





「入るな？」

そう言って重すぎるドアを開けると
楽しそうにスマホを弄るひとみがいた。

「ひとみ？何してん？」

『何って……廉とラインだよ』

「ラインできるん？

なんか、俺のラインはひとみと繋がらんのやけど」

『あー、そりゃそうだよ。



だって、メールアドレスも変えて初期化したんだもん』

「……え？」


ほら、と言って見せられたスマホの画面に映っていたのは、永瀬1人が友達追加されていて、メッセージのやりとりしている様子やった。


この子は何を言ってる？

そんなスラスラ言えるほど普通のことやないやろ。




「初期化？」

口が動かないくせに瞬きだけが回数を増やす。喋りたいことの少しも喋っていないくせに口からの水分だけが奪われていく。


そんな俺のもどかしい様子にも気付くこともなくひとみは微笑みながら話す。







『初期化だよ〜。

分かるでしょ？

今まであったデータを全部消すの。
写真もアドレスも自分でとったアプリもメモもアカウントもメッセージの記録も何もかも！

私全部消したんだよ〜』



語尾を伸ばしながら、嬉しそうに話す。

ついていけない。






.







.







.




「何に喜んでんの？


怒れよ。


嫌だって言えや。


断われよ。






何でそんなにも永瀬の思うままなん？



何やってん？



何でそんなにも支配されてんの」


冷たい言葉だけが俺の口からこぼれ落ちていった。

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