ズットソバニイル Yuta (ページ8)

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8.肯定ページ8

母親は、私の言葉を一つも否定しなかった。

『昨日も、会ったの』

「勇太くんと、会ったの？」

『うん。確かに会った。絶対に会った。

一昨日も会ったの』

「どこで会ったの？」

『ここで寝てたら、会いに来てくれたの』

「夜？」

『うん』

そうなの、そうなの、と全部聞いてくれた。
一通り話し終わると、「ちょっと待っててね」と言って母親は退出した。

おかしいことは自分でも分かってる。

怖い。真実を知ることが。怖い。

退出した母親は、40歳くらいの女性と一緒に入ってきた。

ああ、きっと、私との会話の内容を伝えたんだろう。

こういう事件に巻き込まれた被害者や被害者家族を支援してくれる制度の1つなんだろう。なんとなく勘付いた。

その女性は微笑むと、

「中島明子です。心理カウンセラーです。Aさんとお話ししたいことがあって来ました。少しお話ししたいのですが、良いですか？」

と言った。

『はい』

これは、noと言わせない質問。
素直に会話に従った。

「Aさんと2人きりで話したいので、お母様にはご退出願えますか？」

「はい、よろしくお願いします」と言って出て行く母親の背中を見て、私は分かっていた。

『私、精神異常だと思われているんですか？』

今にも泣きそうな声が出た。

『いいえ、そんなことないですよ。ショックな出来事があったばかりだから、少しでも力になりたくてね』

そんなことを言われたって、私は分かってしまっている。

最近体調はどうですか？暑くなってきたねえ、なんて話をした。会話が正常にできているかを調べているように思えた。

でも、私が記憶喪失だと分かっているのか、過去の質問はされなかった。

けれど、感じている。

中島さんは、どうにかして毎晩彼氏と会っていると言う不可解な話題について早く知りたい、と言うことを。

切り出したのは、私だった。

『中島さんは、私の変な発言について聞きたんですよね？

私が昨日も一昨日も彼氏に会ったことについて』