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4.来客 ページ4

私をぎゅっと力強く抱くから、涙がこぼれた。

落ちていく涙の量なんて気にすることなかった。

失われていた感情が溢れ出していく。

「良かった。本当に良かった

……生きててくれたんだね」




と彼はしきりに言った。表情は見えないけれど、その力強さや声が私を安心させる。




『ありがとう、ありがとう』

彼は、こんなにも私のことを思ってくれているんだ。




「ゆーた。ゆーたって、呼んで」

『…ゆ、ゆーた』



初めて会ったような人のことを下の名前で呼び捨てし、抱きしめているこの状況。それでも、私はずっと求めていた安心感を見つけたような感覚に浸った。



「好きだよ。ずっとずっと。

今は俺のこと分からないかもしれないけど……好きじゃないかもしれないけど。


でも、またここから好きにさせるから」



そう言うと、彼は私にそっと口づけした。思い出の中に、キスの記憶はない。

ファーストキスのように甘酸っぱかった。


『私ね、今は全然記憶がないの。だから、教えてほしい』


「いいよ、なんでも教えてあげる。」

ベッドのそばにしゃがみ、顔と顔の距離を近づけながら話した。



『私たちの出会いはどこ?』

「大学だよ。Aはサークルの後輩。俺が1つ上だった」

『先輩なんだ』

「うん。Aはモテモテだったから、好きになってもらうまでに苦労したよ」

『えー、うそ』

「ホントだって。すごい頑張ったんだから」

『頑張ってくれてありがとう』

「ダメだ、ホント可愛い」


そう言って、髪の毛をくしゃくしゃにして私の頭を撫でた。


彼の好きな食べ物や趣味、よく聞く曲、休みの日にすることを聞いた後、2人のことについて聞いた。デートで行った場所や、2人の約束事、思い出。



『告白は、どんな言葉だったの?』

「好きだよってストレートに言ったよ。それで、Aも好きって言ってくれた時は、すごく嬉しかった」


くしゃくしゃな笑顔で言う姿が可愛くて、今日一番の嬉しさがこみ上げた。

『私ね、ゆうたが彼氏ですごく嬉しい』

顔を真っ赤にしながら無言で私を抱きしめた。


「これからは、ずっと一緒だから。絶対に離さないから」

『離さないで……1人にしないで』



安心して、そのまま意識を手放した。

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かほ(プロフ) - 前作が好きだったので新作嬉しいです!! (2020年5月28日 17時) (レス) id: 43e673b672 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴらみるふぃー | 作成日時:2020年5月27日 19時

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