2.孤独 ページ2
看護師によって体調に関するチェックが簡単になされ、
体には何の異常もないことが分かった。
看護師がいる間、私は両親らしき2人と何の会話もできなかった。というより、どう接したらいいのかが分からなかった。他人行儀に接して傷つけるのも嫌だし、かと言って昔の距離感が私には分からない。
感覚では2人を他人だと認識している私と、私を家族だと認識している2人。
「…寒くない?温度は大丈夫?」
とぎこちない会話を母親であろう女が始めた。
小さく「大丈夫』と言った。
敬語じゃないのは、せめてもの気遣い。これだけで、私たちの会話は止まった。
探り合いの空気の中、医師が入ってきて、両親が呼ばれた。「Aさん、お話があります」と言って出ていった。
私からしたら、気が緩まるから1人になる時間は有り難い。
外を見ると、よく晴れていた。
木には青々とした葉っぱが付いていて、季節は夏なんだと分かる。言葉だってちゃんと操れるし、物の名前やそれらの使い方は全部わかる。
でも、自分のことだけは全部分からない。
自分の名前。
生年月日。
性格。
生い立ち。
価値観。
人間関係。
悲しくて、涙が頬を伝った。
これまで築いてきたであろうもの全部が空っぽになっていた。
それでも、誰にも共感してもらえない苦しみ。
これからどうなってしまうんだろうという恐怖。
これまで私のことを大切にしてくれていた人を、記憶がなくなり認識できなくなったことで悲しませてしまっているという罪悪感。
誰に頼ることもできない。
孤独だけが、この個室に充満していた。
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かほ(プロフ) - 前作が好きだったので新作嬉しいです!! (2020年5月28日 17時) (レス) id: 43e673b672 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴらみるふぃー | 作成日時:2020年5月27日 19時