熔けた恋に名前を 2

57 side Kaito ページ13

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「紗千香ー」









「なに？」









「ちゃんとAに連絡したの？廉最後の試合だよって」









「は？何言ってんの？」









とんでもなく大きな会場の観戦席の異様な盛り上がりの中で、紗千香が俺を不審そうに見た。









「お？なんで？なんで怒っちゃった？」









「海人も絶対聞いてるでしょ。永瀬がAに言った言葉」









頰をぷくーっと膨らませた紗千香が膝に肘をついて、その上に顔を乗っけた。









“絶賛怒ってます”のポーズに頭をかく。









いやぁ、そうだよなぁ。でもあれはちゃんと廉にも考えがあって………









でもなぁ……









確かに、何も知らないAや紗千香には廉がただの嫌なやつにしか見えないんだろうなぁ。









くそー。もどかしい。









もやもやしながらグラウンドを見回して、1−1で迎えたハーフタイムの間中監督を囲んで真剣な顔をするサッカー部の中に、背番号10番、廉の姿を認める。









その険しい顔つきを見て、思った。









………廉。









俺やっぱり、Aにはこの試合見ててほしいよ。









廉の自己満で終わるとか許さねえよ。









…………約束破ってごめん。









心の中で呟いて、紗千香の後頭部に話しかけた。









「Aは本当に廉のこと好きなんだね」









「さぁ？もしかしたらもう紫耀先輩のとこ行っちゃうかもよ？」









「………もし行っちゃっても取り返せばいいってさ」









「取り返すって誰の話して…………え？」









自然な会話に、釘を突き立てた。

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