7章:6『頼れるお兄さん』 ページ47
陸「…あとはこの先を真っ直ぐ行けば…ほら、駅が見えてきましたよ!」
遠くに見える駅の灯りを指さし、陸は無邪気な笑顔を目の前の人物に向けた。
「ありがとうございます、こんな遠くまで案内していただいて…。」
長身の、上着のフードを深く被った明らかに怪しい男が、ぺこりと頭を下げた。
陸「いえいえ、あの場所から駅までの道は少し分かりづらいですよね。俺も慣れるまでは大変でしたよ。」
相手をまるで警戒しない陸は、男をここまで道案内してきたのだ。
陸「え、もうこんな時間?!みんな…というか、一織に怒られちゃう…!それじゃあ、俺はここで失礼します!」
そう言って元来た道の方へ振り返った陸の腕を、その男が力強く掴んだ。
「一織って、和泉一織のことだろう?」
先程までの丁寧な口調はどこへやら、声のトーンまでも低くなったように感じる。
陸「いや…あの、腕痛いので、せめてもう少し力を抑えてくれませんか…?」
この場に一織が居たら、「そこじゃないでしょう?!」とつっこまれていただろう。
「このまま帰らなければ、キミのことを気にかけている和泉一織はすぐ駆けつけるだろうな。そうなれば、もうキミに用は無くなる。そしたら離してやるよ。」
この男の目的は、一織と会うこと?
いや、会うだけじゃないだろうな、話がしたいのかな。それとも…?
陸の脳内で、嫌な予感がぐるぐると回る。
離れようにも、男の力が強くて抜けられそうにない。
陸「痛いです、離してください…」
そう言っても、男は聞く耳も持たない。
このまま誰も来なかったら…。
人通りはもうすっかり無く、通行人に助けを求めるのは難しそうだ。
相手は力が強いし、誰か来てくれても怪我は必須だろう。
陸「誰か………、…誰か…………天にぃ…」
泣きそうになりながら呟いたその声は、男以外の耳に届くことは無いだろう…
……と、思ったのだが。
万理「うちの大事な子に、何か用ですか。」
男の背後に、万理が立っていた。
全く、気配を感じなかった。
「なんだよ、お前…!」
慌てて殴りかかってきた男の手を避け、陸の腕を握っている方の手へ思いっきり手を振り下ろした。
「いってぇ!」
あまりの痛さに男は手を離し、その隙に陸は男から離れた。
片手を庇いつつ、飛びかかってくる相手の攻撃を避けて、万理はその背中をトンっと押した。
自らの勢いで倒れ込んだ男は、痛さに悶えている。
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草津蓮哉(プロフ) - 欅さん» コメントありがとうございます!学業の関係で中々更新できていませんが、時間を見つけて少しずつでも更新していこうと思っております。推しは環と万理さんです…! (2020年3月5日 7時) (レス) id: ef06dcdedf (このIDを非表示/違反報告)
欅 - この作品に巡りあえて幸せです! お忙しいとは思いますが、頑張ってください。応援してます。 推しは誰ですか? 私は三月推しです! (2020年2月4日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:草津蓮哉 | 作成日時:2018年5月30日 2時