4章:7『気持ち』 ページ27
仕希「携帯も財布も置いてって……心配したんだよ?!」
相当慌てていたのか、青く綺麗な髪はとてもボサボサだった。
この姿で街中を探し回られたら、それこそ何かしらの記事を上げられてしまいそうだ。
梨将「ご、ごめん」
仕希を宥めていると、寮の中から声がした。
三月「あれ、見つけたのか?よかったな!」
大和「すげぇ取り乱してたんだぞ、勘弁してやってくれ」
総出で探しに来ようとしていたのか、玄関にはみんな勢揃いだった。
仕希「…梨将の歓迎会…しようって…」
絶対離さんとばかりに、仕希は梨将の腕を力強く掴んで寮の中へ引きずり込んだ。
奥からは、ケーキの良い匂いがした…。
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みんなも忙しいため、たった2時間の歓迎会はあっという間に終わった。
食器洗いをする仕希と、椅子に座りその様子を見る梨将。
サボっているのではなく、梨将が「手伝うよ」と言ったのに対して、仕希が「主役なんだから」断ったのだ。
寮には2人しか居らず、食器を洗う音だけが響いている。
梨将「…あのさ」
立ち上がる梨将に、仕希は手を止めた。
梨将「…その……仕希は、隣で俺が歌うのって…どう思う?」
上手く言葉がまとまらず、すんなりと声が出てこない。
梨将「えっと…仕希はずっとソロで歌ってきて
、仕希1人へのファンがたくさん居る…。そんな所へ俺とデビューするってなって…ファンもその…離れて行っちゃったら…」
言葉をつまらせながらも話し続ける梨将に、仕希が口を開く。
仕希「確かに、今回の件でファンのみんなには迷惑をかけることになるかもしれない。けど、他の誰かから言われたから、じゃない。僕が、梨将と歌いたいんだ。」
梨将は、仕希とあの公園で歌うようになってからずっと思っていた。
自分の夢を、仕希に押し付けてしまっているのではないか、と。
今だって、今度は仕希の夢を潰してしまっているのではないか、と思っていた。
それでも、仕希は自分に「一緒に歌いたい」と言ってくれている。
たった今考え込んでいたことに加え、昔から心の奥底で悩んでいたことさえも壊してきた。
すぅっと身体が軽くなったように感じる。
梨将「そっか…、ありがとう」
ようやく心から笑えた。
緊張が緩み、2人で声を上げて笑う。
忘れ物を取りに来た環と壮五は、そんな2人の急に始まった笑い声に、少し怖く思っていたことは秘密である。
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草津蓮哉(プロフ) - 欅さん» コメントありがとうございます!学業の関係で中々更新できていませんが、時間を見つけて少しずつでも更新していこうと思っております。推しは環と万理さんです…! (2020年3月5日 7時) (レス) id: ef06dcdedf (このIDを非表示/違反報告)
欅 - この作品に巡りあえて幸せです! お忙しいとは思いますが、頑張ってください。応援してます。 推しは誰ですか? 私は三月推しです! (2020年2月4日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:草津蓮哉 | 作成日時:2018年5月30日 2時