バイオレットフィズ (ページ13)

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12話ページ13

*
sideノーマン

【夜】

「スーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

『…』

はあ…やっぱりいい匂い

同じシャンプーやボディソープを使っているのにどうしてAはこんなに甘くていい匂いがするんだろう

今僕はベッドに座り本を読んでいるAを後ろから抱きしめている

これにはちゃんと理由がある

図書館にいたらすっかり遅くなってしまった

食料庫の整理予備リネンの点検空き部屋の片付け

この3日、僕ら(年長者)に昼間の時間は与えられていない

それ即ち脱獄の計画が大幅に改変される

それにAに話しかけたり触れるどころか視界に入れる時間すら大幅に減っているのだ

解けない緊張状態で流石に疲労も溜まってきている

これからどうしたものかと考えあぐねながら寝静まったであろう寝室に戻るとAがベッドに腰かけ本を読んでいた

『…ノーマン』

「A、寝れないの？」

『…』

灯されたカンテラの炎が紫色の大きな瞳の中で淡く揺れている

『…その、』

「？」

『疲れている時は、ハグがいいって…本に、書いてあって』

成程、昔から勘が鋭いAには見透かされていたようだ

「それで僕とハグするために起きてたの？」

『…』

そっぽを向くA

暗くてよく分からないが恐らく顔が赤い

まずい、口角が天井まで行きそう

この生き物愛しすぎる

『い、嫌ならしな「するよ？」…おいで』

控えめに手招きするA

読書の邪魔はしたくないという口実で後ろからハグさせてほしいと頼み今に至る

正面からは僕には刺激が強いからね…

今Aは僕の腕の中にすっぽり収まりされるがままの状態

『…首、そんないい匂いするの』

「するよ」

ええとってもいい匂いですとも

一生堪能していたいぐらい

表情筋ゆるゆるの笑みがこぼれる

「ふふっ」

『…っ』

Aの体がピクっと反応した

「？…A？」

『…い、』

息が、と小さく呟いたAの顔は、カンテラで照らされなくても分かりそうなほど真っ赤になっていた

ドクンと心臓が跳ねる

Aは首が弱いのか、それなら耳も…

「…くすぐったいの？」

『っみ、耳元でしゃべんないで』

これ以上はまずい、僕が

「ごめんからかった、僕に付き合ってくれてありがとう。元気でたよ。もう遅いし今日は寝よう｣

『…うん』

危ない危ない、歯止めが聞かなくなるところだった

でも充分癒された

Aには感謝しかない