2-3 ロバート ページ7
閑静な住宅街に入る。見慣れた景色に心が落ち着ける。自宅に帰る車の中、俺の携帯が鳴った。非通知の電話に首をかしげながらも、キャロルに電話を代わってもらった。
そんなキャロルも非通知という文字をみつめて、小首をかしげていた。今にも雨が降り出しそうな雲をうっとおしく思いながらも、ゆっくりと車を走らせる。
「もしもし。生屋のロバートです」
「ロバート? ちょっと本人に電話を代わってくれないか」
「ごめんなさい。ロバートは今運転中でして、電話に出られないんです」
「いいから代われ。俺の言うことが聞けないのか」
眉を寄せるキャロルは「なんなのこの客」とでも言いたげだった。俺は電話の主をある程度察して、電話を奪い取る。
「もしもし。代わったぞ。何の用だ」
「相変わらず短気な男だ。気性が荒いわ」
「ついでに空腹だから、その分も口が悪いと思うぜ」
唾をかけてやりたかったが、電話じゃ無理だ。
「お前のチームと俺のチームで少し戦ってみないか」
「バトル?」
「そうだ。アメリカ全域が舞台さ。どこに逃げようと隠れようと構わん」
「何のためにそんなことをする」
「分かるだろう」
声の枯れた男は、数秒の間をおいた。俺の脳味噌に弱い電流が走る。
「お前は非日常を日常としている。
それを続けて10年だ。毎日でも銃声を聞き、血を見て、心臓の止まった人間を運ぶ。そんな毎日に飽きているのはお互い様だろう?
非日常のさらに奥にあるスリルを欲しがっている。俺も、お前もだ。
そしてマサチューセッツの2大勢力である俺とお前がぶつかれば、非日常のさらに奥へいけるはずだ。
悪くはない話だと思うがな。命の賭け方のランクが上がったと思えばいい」
男の言葉は、俺の生活をふと思い起こさせる要素があった。俺は溜息をひとつついて、渋々と声を出す。
「お断りさせてもらうよ。俺は仕事仲間をとても大事に思っているし、今任せられた仕事を精一杯やりとげたい。
俺等を2大勢力のひとつに数えてくれるお前を本当にありがたいと思うし、お前の言うことも分からなくはない。
でも、10年間を刺激的だったと思わないといけないんだ。慣れてしまっても。人の命がかかってる仕事だから。
俺は命をあからさまに出し合うゲームにのる気はない。生屋をやってる身だからな」
7人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 小春さん» 小春さま、読んでくださって嬉しいです。ありがとうございます♪ まだ現実にない未来の世界、海外旅行行ったことないので、100%レイチェルの創造のお話です( ̄∇ ̄*)ゞ 楽しんでいただけて光栄です。もう一度、ありがとうございます! (2016年4月2日 23時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
小春(プロフ) - 凄く読みごたえがあり、内容も丁寧で、楽しかったです!ハラハラドキドキして、つい時間がたつのを忘れてしまいました。イベント参加、ありがとうございましたm(._.)m独特の世界観も、大好きになりました!! (2016年4月2日 23時) (レス) id: f64e477862 (このIDを非表示/違反報告)
水樹舞(プロフ) - レイチェル・ハジェンズさん» なるほど。参加している作品がこの作品のみでしたので申し訳ありません。最近は忙しいので今度じっくり読ませていただきます。 個人的にはロバートが1番好きです。かっこいい。 (2016年2月9日 20時) (レス) id: 4fe470ed05 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 水樹舞さん» 恥ずかしながら、シリーズでランキング入りしてますので思う存分楽しめるかと! スピンオフも好評いただいているので、そちらも是非。 (2016年2月8日 17時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 水樹舞さん» 読んでいただいてありがとうございます♪ 人物紹介は第一作の命にキスを、で惜しみ無く描いてあるので見てください。第二作のユナイテッドクレイジーではお話の世界観を楽しんでいただけて、第三作の此方はアクションが見所です。よろしくお願いいたします! (2016年2月8日 17時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年1月12日 22時