ブラッド・アクション

11-3　ビアンカ ページ47

キャロルのGPS機能が鈍い反応を示していた。チカチカとブルブルともなる点が危うい。アンジェリカに電波を妨害されているのかもしれない。


　ロバートをひとりにしておけないので同行してもらっているが、怪我については巨漢に全身を投げられるという前科があるので速くはダッシュ出来ない。とは言え、命がかかっているのもキャロルにも通ずることなのだ。今どうなっているのか、映像の情報を伝えてくれる機器がひとつもなくてはどうしようもない。


「ビアンカ、それ重くねぇか？ 俺が持っても良いけど」
「誰がお前にもたせるか！」
「俺そんなに信用ない？」
「ない！」


　ジェームズにガトリング銃？ 笑わせるな。


　でも、確かにガトリング銃はゴツい見た目に比例してずっしりと腕に圧力がかかっているのは事実だ。気持ちだけ先走って一番前で指揮しているが、ロバートも診なくてはいけないし、勝手にひとりでフラフラしそうなジェームズも監視しなければ危ない。


　ぐっ、と低く喉が痛く鳴った。
　キャロルとの距離は確かに近づいているものの、もう大の字で伸びてしまいたい程に体力が消耗してしまっているのだ。息も上がっているし、さっき発砲した時に分泌したアドレナリンが興奮を長続きさせている。


「あの屋上にいるのって……」
「こっから撃てるか？」
「む、無理だろ……。リアサイトにふたり入る」


　屋上めがけてリアサイトを覗き込むが、ふたりが組み合っている姿を綺麗に映し出してしまう。どちらが押しているのか押されているのかも分からない。


「誰かキャロルさんを引き剥がさねーと……」


　ジェームズの一言にロバートが反応する。目にも留まらぬ速さでビルの階段へ急ぎ、「俺が行く」と先頭をきる。この場合適役は負傷が少ないジェームズなのだが、ロバートにはそれを考える余裕もなかったらしい。


「お前等は反対側のビルの屋上へ行け。斜めから狙うな」
「ちょっと待て！」
「もう動き出したもん止まる訳ねーだろっ」


　ストップをかける私の襟をひっぱり、ジェームズは賃貸のビルを駆け上がって行く。腕の中に抱えるガトリング銃があるまま、階段を登るのはミスだった。銃口が壁に当たりそうになったり、下を向けると階段でつっかえそうになった。

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