【S-GAME】 2-1 ビアンカ ページ5
美容院に行った帰り、近場のカフェでガトーショコラをテイクアウトした。
今日はロバートとビアンカのやってる生屋の創業10周年で、ジェームズが小さなパーティを目論んでいるのだ。
仕事も分からない程度に量を減らせるだけ減らし、夜はささやかなご馳走でも食べて貰おうということらしい。きっと喜ぶ顔が見られる。
私が先に思いついたのに、計画したのはジェームズだなんて気に喰わないけれど、協力しない訳にも行かなかいじゃないか。
ふたりが大好きだから。
3月はまだ雪がちらついていて、あちらこちらと白の世界が形成されていた。マフラーに鼻先まで埋めながら、エラ・ゴールドシティの雑踏に紛れる。
駅に向かう足取りで、カチャ、という殺意のないピストルの音が聞こえた。衣服の中で異物が擦れ合う音だ。
アメリカは銃の使用が許可されている地区があるが、エラ・ゴールドシティはそのひとつではない。ただ、音を鳴らすのは素人か、プロの“わざと”の行為である。
不穏な音に一瞬胸がざわつく。
だがその道に長けた者、犯罪者は大体ロバートの元にやってくる。大物の下で働く殺屋か、その黒幕か。エラ・ゴールドシティはスプリングフィールドとそう距離は離れていない。さっきの野郎が近々来るかもしれない。
さて。どうしたものか。
今はポケットに手を入れて、染めたての髪をマフラーに押し込んで、黒のブーツを普段通りに動かし、気付かれないように他に怪しい奴がいないかを探そう。
雪が積もる日に、素足のまま赤いヒールをはいた女は、狼の毛皮のコートをはおって巻き煙草を咥えている。
黒のコートの男は曇りの日にサングラスをかけ、黒のハットの角度を気にしている。
腕時計を近づけてぼそぼそと話している青い目の老紳士は爪先の方向がおかしい。
他は……。
こんな場に合わない奴等と遭遇するのは、月に1度や2度。日常と言ったら日常(月常?)で、普通のことかもしれない。ただ、いつもの奴等と気品が違う。
どこかの幹部のような仕草に目付き。時間も技能も余裕を持って、プロの仕事を遊びかギャンブルかと勘違いし、優雅にファッションとして身に着けている。
厄介者だが、私達はこの瞬間を待っていたのかもしれない。
リスキーでもう慣れた非日常から抜け出せるような。
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 小春さん» 小春さま、読んでくださって嬉しいです。ありがとうございます♪ まだ現実にない未来の世界、海外旅行行ったことないので、100%レイチェルの創造のお話です( ̄∇ ̄*)ゞ 楽しんでいただけて光栄です。もう一度、ありがとうございます! (2016年4月2日 23時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
小春(プロフ) - 凄く読みごたえがあり、内容も丁寧で、楽しかったです!ハラハラドキドキして、つい時間がたつのを忘れてしまいました。イベント参加、ありがとうございましたm(._.)m独特の世界観も、大好きになりました!! (2016年4月2日 23時) (レス) id: f64e477862 (このIDを非表示/違反報告)
水樹舞(プロフ) - レイチェル・ハジェンズさん» なるほど。参加している作品がこの作品のみでしたので申し訳ありません。最近は忙しいので今度じっくり読ませていただきます。 個人的にはロバートが1番好きです。かっこいい。 (2016年2月9日 20時) (レス) id: 4fe470ed05 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 水樹舞さん» 恥ずかしながら、シリーズでランキング入りしてますので思う存分楽しめるかと! スピンオフも好評いただいているので、そちらも是非。 (2016年2月8日 17時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 水樹舞さん» 読んでいただいてありがとうございます♪ 人物紹介は第一作の命にキスを、で惜しみ無く描いてあるので見てください。第二作のユナイテッドクレイジーではお話の世界観を楽しんでいただけて、第三作の此方はアクションが見所です。よろしくお願いいたします! (2016年2月8日 17時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ:https://twitter.com/seshiru777777
作成日時:2015年1月12日 22時