ブラッド・アクション

9-3　ロバート ページ35

「さみぃ……」


　キャロルにジャンパーを貸してしまったので、薄手のパーカーが１枚とその下にセーターとインナーのセットだけ。雲が分厚すぎて、太陽は全く顔を出さない。吹く風に首が冷やされ、震え上がってしまいそうになる。


　こんな廃墟みたいな所でそれぞれが単独行動をしているとは、会社のリーダーとしては痛い限りである。それぞれに武器は持たせているし戦闘態勢は万全だが……。


　一番の心配である救急手当の準備は通常通りで俺は愚か、もっとも危ない人物も独り。
　一番戦闘向きであるジェームズが心配である。


　メールでお互いが何処にいるか知っているものの、キャロルの居場所だけは俺しか知らない。見られたくないと、戦っていることを知られたくないと強く撥ね付けた。俺さえも撥ね付けられたのだ。よっぽど内緒にしておきたいのだろう。


　だが、俺も加勢することは出来るだけ避けたいのである。キャロルのアクションは大人でもチビるほど怖い。それにひとりで充分戦えるだけの力があり、それは現役のまま。


　俺達は一緒にいて、倒壊した橋の周辺を徘徊していることになっている。確かに、強ち嘘ではないのだ。コネチカット川横のストリートボールなのだから。何をしているのかは別にせよ、確かに嘘ではないのである。


　携帯が着信音と共に、ポケットの中で震える。俺は受信されたメールをみて「はて」と思い、その場に足を止める。


【ビアンカ Re:】
　どういうこと？

【俺 Re:】
　何が？

【ビアンカ Re:】
　アンタは今キャロルと一緒にいない
　そしてキャロルはストリートボールのコートの中

【ビアンカ Re:】
　どうして嘘をついた？


　俺は息を止めた。さっきまで脳内で議論していたことだ。暫く返信しないでいると、もう一度ビアンカからメールが来た。何て返信すれば――。


【俺 Re:】
　なんで知ってるんだよ


　ビアンカに隠し事が出来た試しがない。先日だって俺が軽度のぎっくり腰を隠していると、直ぐに見つかってしまった。肘で思いっきり腰を突かれて、病院送りにされた。ビアンカの運転で病院に行き、３週間は安静にと言われデスクワークをコツコツとこなしていた。


「やばい」


　あの時の痛みと言ったらもう。
　思い出しただけでも腰にパッと手を当ててしまう。

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