ブラッド・アクション

8-2　ジェームズ ページ30

キャロルさんとロバートがブリッジに行って巨人を探している間、俺とビアンカはベンチに座って折り畳み型のアンテナを出して、Black bloodのメールを逆探知していた。


　俺は機械類に弱いことはないので、何か出来るかとも思ったがどうやらビアンカと俺は同じ次元では生きていないらしい。俺の手がバシッと音をたてて弾かれてしまった。


　しかもそれが無言で超絶怖い。


　冷や汗をかいていても護衛役として一緒にいなければならなかったので、ベンチの隅に細々と座らせてもらった。どっしりと腰をかけて、右足を左膝に置いているはずなのに。それでも、何故だか様にならないのが自分でもわかる。


　怖いと思いながらも、コンピュータ操作をちらちらと見やる。時々押されるエンターのキーが唯一俺に理解出来る範囲だった。


　肩にかかった少し長い髪をささっとひとつに結び、銀紙から抜いたチューイングガムを甘く噛む仕草に、頬が熱を持つのが分かった。こういうビアンカの余裕のある所に惹かれてしまうのかもしれない。出来るものなら、俺の物にしたい。


　俺が横でニヤニヤしていると、ビアンカが俺の頬に張り手をした。


　それも、バシッと良い音。


　女は周辺視野が広いと聞いたことがあるが、俺が笑みを浮かべていたのを見たのだろうか。それとも俺の性格上、びびっと予感したことなのだろうか。


　どっちにしろ、ビアンカは賢くて慣れ慣れしすぎて、そして俺は阿保すぎる。恥ずかしさが少し込み上げてきて、自分の髪をくしゃりと撫でた。もう、そっぽを向いておこう。


「なあ――」


　急に話しかけてきた。俺は、冷たく突き放すように低く言った。


「なんだよ」
「私がエラ・ゴールドシティのこと話したじゃねーか、そろそろ情報出て来てるだろ」
「あー、ゴールドのな……。俺の部下から幾つか上がったけど、ガセネタは言わねーぞ」
「ガセでも一応話せ、何も情報がないんじゃ手の打ちようがないだろう」


　怒ってても、目はパソコン画面にあると思うと悲しくなる。俺はひとつ溜息をつき、ジャケットのポケットからアイフォンを出した。


「まず信頼性の高いのから話すぜ」
「ああ」
「赤ヒールの女、黒ハットの男、それから腕時計と話す青い目の男。
　コピーボスの刺客だ。お前を監視してる奴等だそうだ」
「へえ……？」


　ビアンカは自嘲めいた笑みを浮かべた。

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