2話:町での秘密 ページ3
建物内へ入った飛鳥は辺りを見回す。
1階からは人の気配は無く、どうやら上の階に居るらしい。
飛鳥は軽い足取りで上へ急ぐ。
その身のこなしは、決してただの狂言師ではなかった。
飛鳥には、師匠以外にはこの町の誰にも言っていない秘密があった。
兄弟子たちにさえ言っていない秘密。
それは………………………………………
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炎の中、1人蹲っていた。火事になる前、母親は下の階で仕事をしていたため、男の子は1人で遊んでいた。
よく母親と共に猿楽を見に行っていた男の子は、狂言師に憧れていた。
だからこの時も、最近見た猿楽での台詞を真似て人形と共に狂言師ごっこをしていたのだ。
けれど、その日はいつもと違う。
外から母親の叫び声が聞こえる。慌てて階段へ向かうが、下の階から黒い煙が上がってきていて、怖くて降りれない。
自室へ戻り、蹲る。
さっきまでの楽しい時間はすっかり変わってしまった。
窓の外にまで火の手が上がり、ついに母親の声すらも聞こえなくなった。
あぁ、自分の夢、狂言師になる夢は、少しも叶わないまんま、終わってしまうのか。
泣き叫びながら、幼い男の子は内心既に諦めていた。
そこへ。
『大丈夫だよ。頭を下げて、ゆっくり深呼吸して。』
聞き覚えのある声。
煙を沢山吸ってしまわないようにと、布を差し出してくる手。
「飛鳥お兄ちゃん…」
安堵から、男の子はそのまま気を失ってしまった。
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『さて、どうするか……』
男の子を抱き抱え、来た道を引き返す。が、炎はすっかり先程までより酷くなっていた。窓の下を見る。
炎によりはっきりとは見えないが、この炎さえ抜けてしまえば外なのだ。
しかしここは2階。決して低くはない高さ。
なのに、後ろへ下がり助走をつける。
そしてそのまま、窓から飛び出した。
町民たちがその様子を見て慌てふためく。
しかし、飛鳥はそのまま近場の木へ飛び移ったのだ。
その身軽さはまるで、忍者………………
そう、飛鳥は忍術の学校へ通っている。
忍術学園とは違う、もっと小規模で実技中心の学校。
しかしやはり、戦闘技術ばかり学んだ故に、炎への対処にはほとんど無知だった。
木から降り、外傷の無い男の子をゆっくりその場に寝かすと、飛鳥は倒れた。
慌てて駆け寄る師匠が目にしたのは、背中を火傷した飛鳥だった…。
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作者名:草津蓮哉 | 作成日時:2020年1月26日 4時