明日への光2[黒]

82.村上side ページ32

ヨコが病院に戻ってから1週間が経った


一時はどうなるかと思ったけど、少し落ち着いたみたいで安心した


だけど、先生の話によるとヨコに輸血治療は体に合わない点が多く、違う方法で治療を進めていくと見舞いに行った日に聞かされた


ヨコの治療はなかなか思うように進まなくてもどかしい


それはヨコ自身が1番感じてることやと思うけど


たくさんのことを我慢して、自分を犠牲にしてきたヨコをずっと見てきた


だからこんなときくらい思うようにうまくいってほしいと思うのに


現実はそううまくいかない・・・


俺にはどうすることもできなくて、何をしてあげればいいのかもわからず、自分の無力さをただ嘆いた


ベッドで眠るヨコの隣でそんなことを考えていたとき、目の前にあったはずの手が俺の手を握っていた


村「・・・っヨコ？」

横「かお」

村「顔？がどないしてん」

横「顔、険しすぎ。八重歯はどこ行ってん」

村「アホいえ、ここにずっと健在しとるわ」

横「うわっ」


気づくとヨコが起きていて、俺の顔が険しすぎたのかふっと笑われた


元気づけなあかんはずやのに、俺がヨコに元気づけられていた


先生からの話も当然聞いていたはずやのに、ヨコはいつもと何も変わらない


そんないつものヨコが、あたり前にいることが嬉しかった


だから俺も、いつもの俺でいようと決めた

村「あんた隈できてるけどちゃんと寝れてんのか」

横「ちゃんと寝てるけど、顔色悪いからそう見えんねんて。先生が言うてた」

村「そうか、ほんならええけど」

横「みんな心配するかな」

村「あと5回は同じ会話するやろうなぁ」

横「えーじゃあもうみんなに言うといてよ。面倒くさいわ」

村「わかったわかった。言うとくわ」


前のような不安定な感じは少なくなってきたけど、メンバーに心配されるかを気にするところは何も変わっていない


そんなヨコに安心している俺がいた


変わらないってあたり前のようで難しい


だからこそ今のヨコが変わらないでいてくれたことが、俺はとても嬉しかった



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