8.目覚めた時の景色 ページ8
自分は､どうしていたんだっけ｡嗚呼､彼の後ろに居た筈が見知らぬ誰かに連れ去られたんだ｡それで.. ｡ その先を思い出したくても思い出せない｡何故か機械音が聞こえ､不思議に思い瞼をゆっくりと持ち上げるとそこには白い天井が広がっていた｡
指先をぴくり､とも動かす事が出来ず顔だけ横に向ければそこには､血塗れのまま眠る彼が居た｡思わず涙が零れる｡彼は自分の為にここまでしてくれたのかと｡痛くて動かしたくもない手を動かし彼の頬に手を添えては｡
『まじ､まさん..。』
私の声に答える事無く安らかな寝息を立て眠る彼を見て､不安になった｡ もしかしたら､今度は彼が狙われるのではないかと｡私は怖がりで､臆病だが彼だけでも護りたい｡ 綺麗な黒い髪を撫で､額に触れるだけの口付けを一つ｡
「ん､ .. ？A､起きたんか｡どうや？体､痛い所あるか？あの時､何でワシから離れたんや｡このドアホ｡」
その冷たいような暴言も､今は心にす､っと溶けて不安を和らげていくようだった｡黒い革手袋をした手が重なり指先が絡むと､その動作に脈が早くなり頬を染める｡ 大人は余裕があって狡い｡
『ごめ、んなさい..｡でも､もう..離しません｡この手を､離したくないです､』
「..、恥ずかしくないんか？そんな事言うて｡お馬鹿さんやのう､Aは｡離そうとしても､ワシが握ってたる｡せやから､安心せい｡」
何時もは距離を感じていた｡なのにこんなに傍に居たのかと今更思い知らされる｡ゴツゴツとしたその手は､強く手を握り離すことは無い｡
『真島さん､.. この間の質問ですが.. ､ 友達､ 辞めましょう｡ 私達 ｡』
「.. は？ どういう..」
『ごめんなさい､私..貴方をそういう目では見れないんです｡』
時計の針が時を刻む音だけが聞こえる｡彼は声を発する事無くただこちらを見詰めた､だが次の瞬間には顔を寄せられ血なまぐささが鼻を通る｡その綺麗な黒い瞳に惹かれるように見詰め､
「なら､ワシを今までどんな目で見てたんや？なあ､教えてくれや｡ 」
『そ､れは..』
「ヤラシイ目で見てたんか？ッヒヒ！御前も案外スケベな所があるのう｡」
『ち､違います！私は､ .. ！っげほ、』
焦りから頭が回らなくなり答えられずに居ると間だ体は本調子では無く咳き込んで｡ その質問に答えること無く､ベットの中に潜り込めば傍からは笑い声だけが聞こえた｡
「..、A｡御前を俺に護らせてくれ｡」
手の甲に一つの接吻が落とされていた｡
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作者名：砂糖 | 作成日時：2020年3月7日 14時
