突然出会った王子様 5 【染谷勇次郎】

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(勇次郎side)



自室に戻り、ボスっとベッドに寝転ぶ。





“好きだ”と自覚してしまえば、今まで思っていたことも一気に腑に落ちた。





彼女といれば安心して落ち着き、楽しいこと



自分のことより彼女を優先していたこと



可愛いと、綺麗だと思ったこと



見惚れてしまったこと



彼女を探すために疲れなんか感じず走り回ったこと



彼女のどんな表情も僕だけに見せればいいと思ったこと



本当の彼女を他の奴らに見られたくなかったこと



彼女に他の奴らを近付けたくないと思ったこと



よく彼女に触れていたこと





思い返してみれば心当たりが多すぎた。





……自覚していなかっただけか





この感情を自覚してしまったけれど、……どうするのが正解なのだろう。



ベッドで仰向けになり、照明に手をかざす。





触れて、いたい



この手で、もっとAに触れていたい



僕がAに対し感じることを、同じようにAも僕に対して感じてほしい



“恋人”という関係に、なってみたい



もっと、距離を縮めてみたい



Aが弱さを見せるのは僕だけがいい



あのふわりとした優しい笑顔を、Aの色んな表情を誰よりも多く見たい





感情を自覚しただけで、こんなにも一気に気持ちが溢れてくる。



無意識にこんな想いを無視してきていたのだろうか。



でも多分彼女は

僕のことをそんな風には見ていないだろう。



今はまだ、僕を男として見ていなくても。



これからは、ただの同居人や友達ではなく男として意識させるために。



彼女を振り向かせられるように。





……でも、その前に





ベッドから起き上がり、鞄の中に入れていたスマホを取り出す。



開いたのは＜愛蔵＞と表示されているトーク画面。



さっき苛ついて感情のまま殴ったけれど元はと言えば自分の感情を自覚していなかったくせに宮永を彼女に近付けたくないという僕の我儘が原因。





Aとのこれからを願う前に、こんな子どもじみた自分を少しずつでも変えられれば





そう思い、謝罪の文を打ち入れてみる。





………無理だな





数文字入力したところで一気に消し、スマホの電源も切ってベッドに投げ置く。



あまりにも慣れていなさ過ぎていきなりそこまで自分を変えることは出来なかった。



　

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